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雑誌掲載記事

【連載】ゴム・樹脂材料のシミュレーション技術(最終回)

第4回 分子シミュレーションによる材料設計

株式会社JSOL エンジニアリング本部

高分子関連技術情報誌「Polyfile Vol.53 No.590」掲載

1.はじめに

本連載では,ゴム・樹脂材料を用いた工業製品をターゲットとしたシミュレーション技術を紹介している。最終回である本稿では,分子シミュレーションによる材料設計を取り上げる。ミクロな材料特性発現メカニズムの理解をターゲットとした,分子シミュレーションによるアプローチについて解説する。

2.シミュレーションソフトウェア

ゴムや樹脂などの高分子材料の特性を十分に表現するためには,分子単体の特性に加えて,たとえば複数分子が相互作用することにより発現する特性,さらに高次な構造を生じる場合に発現する特性などを総合的に考慮する必要がある。このため,ひとつの物理概念(モデル)のみでは高分子材料の特性発現のメカニズムを説明することは難しく,特性を発現するスケールごとに異なる物理概念が適用されることが多い。

本稿では分子シミュレーションソフトウェアとして,J-OCTA(ジェイ・オクタ)を用いる1)。J-OCTA は国家プロジェクト『高機能材料設計プラットフォーム』の成果であるOCTA1)をベースに開発されたソフトウェアであり,主に1nm〜1μm スケールの複数の異なる物理モデルをベースとする解析エンジンと,それらをコントロールする統合ソフトウェアから成り立っている。また,ソフトウェアには,異なるスケール間で得られる情報を互いにやり取りできる仕組みが提供されている。やり取りされた情報を適切に解析に取り入れることで,より幅広いスケールで,詳細な材料特性予測を行うことが可能である。

本稿では,数nmのミクロスケールでの分子形状や相互作用を扱う分子動力学法(MD)と,数10〜100nmのメソスケールでの分子集合体の挙動を扱う散逸粒子動力学法(DPD)を用いるが,いずれもJ-OCTA に組み込まれている。

3.ナノコンポジットの分散構造

図1 ブロック共重合体とCNTのモデル 図1 ブロック共重合体とCNTのモデル

ポリマー中にナノフィラーを分散させたコンポジット材料は,フィラーの分散構造によって電気伝導性,熱伝導性や力学特性などを制御できる可能性があり,産業界から注目を受け続けている。一方で,その分散構造の制御には課題も多く,様々な取り組みがなされているが,シミュレーションによる材料設計のサポートに強い期待が寄せられている2),3)

ここでは,メソスケールの分子シミュレーション手法である散逸粒子動力学法(Dissipative Particle Dynamics :DPD)4)を用いて,ポリマー(ブロック共重合体)の相分離中のカーボンナノチューブ(CNT)の分散構造を評価する。さらに,得られた構造をメッシュデータに変化し,有限要素法を用いた構造解析を実施する。ここでは非線形モデルを適用することで,材料の内部破壊をともなう平均機械特性を評価する。

計算に用いる分子モデルを図1に示す。各分子はすべて同じサイズの粒子からなり,A6B14のブロック共重合体と,同じ長さのCNT相当の分子を扱う。同一分子内の粒子間にはバネ型の結合長ポテンシャルを設定して,一本の鎖として表現する。さらにCNTには剛直性を表現するため,バネ型の結合角ポテンシャルを設定している。

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