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材料解析 第一原理電子状態計算ソフトウェア Siesta

[解析事例] 結晶の熱膨張

量子化学・DFT
マテリアルサイエンス

目的と手法

熱膨張は材料の基本的な特性です。セラミックスでは一般に高温ほど熱膨張が大きいことが知られています。材料の熱膨張は体積膨張係数αV または線膨張係数αLによって表され以下の式で計算されます。

\( \alpha \)V =\( \frac{ 1 }{ V } \frac{ dV }{ dT }(= 3\alpha \)L\( ) \)

ここではカリウムとKZP(KZr2(PO4)3)について結晶セルの体積の温度変化をSIESTAを用いて調べました。熱膨張率の低い材料はデバイス等の微細化が進む中で着目されていますが、KZPはそうした低熱膨張率材料として知られています。
ある温度におけるセルの体積VをSIESTAを用いて第一原理MDにより計算しました。DFTの汎関数にはPBEを基底関数にはDZPを使用しました。カリウムとKZPに対し、それぞれ10ps、5psのMD計算の結果からセル体積の平均値を算出しました。

図1 KZPの結晶セルと第一原理MDで計算したセル長の温度変化(初期値に対する比)
図1 KZPの結晶セルと第一原理MDで計算したセル長の温度変化(初期値に対する比)
図1 KZPの結晶セルと第一原理MDで計算したセル長の時間変化(初期値に対する比)

解析結果

第一原理MDで計算した200-500Kの範囲でのカリウムとKZPの線膨張係数を図2に示しています。カリウムでは高温ほど熱膨張が大きくなることが確認できます。カリウムとKZPの線膨張係数はそれぞれ80, -0.4 [10-6K-1]と報告されており[1,2] 、SIESTAの結果はこうした材料の違いを再現しています。

図2 線膨張係数の計算結果
図2 線膨張係数の計算結果

KZPは低熱膨張率であり、また膨張率に異方性があることが知られています。そこで各セル軸の温度変化について調べました。図3にKZPのa軸、c軸の温度変化を示します。実験では昇温時にa軸方向は収縮し、c軸方向には大きく膨張することが報告されており[2]、SIESTAの計算結果はこの傾向を再現しています。

図3 KZPのa軸、c軸の温度変化図3 KZPのa軸、c軸の温度変化

引用
  • [1] V. K. Jindal and K. N. Pathak, Phys. Rev. B, 14, 3704 (1976)
  • [2] 太田、山井,窯業協会誌 95, 1987 531

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