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[解析事例] カルサイト(方解石)の複屈折と光吸収

量子化学・DFT
光学・電気・磁気
マテリアルサイエンス

カルサイト(方解石)は、炭酸カルシウムの単結晶であり、光学的には複屈折を示す材料としてよく知られています。 特に透明度の高いカルサイトは、複屈折特性を利用して偏光板などの光学素子としての用途があります。カルサイトの結晶構造は図1に示すように六方晶(菱面体晶)であり、炭酸イオンCO3-は炭素を中心にして酸素が正三角形状に並ぶ構造です(図2)。 カルサイトが複屈折を示す理由として、炭酸イオンCO3-が示す異方的な電気分極特性が挙げられています[1]。 図1の結晶モデルでは、炭酸イオンCO3-がX-Y平面に対して平行な位置関係にありますが、電場の偏波方向がXY面に平行であるか、または垂直であるかで電気分極の応答が異なるため、複屈折が発生します。
また、カルサイトは絶縁体ですので、光学特性は価電子帯と伝導帯の間の光学遷移によって決まります。特に光吸収は、バンド構造を直接反映するため、電子状態を知る重要な手掛かりとなります。

図1 カルサイトの結晶モデル図1 カルサイトの結晶モデル

図2 炭酸カルシウムCO3-イオンを構成する炭素と酸素の位置関係 図中の白矢印は電場の偏波方向を示す。図2 炭酸カルシウムCO3-イオンを構成する炭素と酸素の位置関係
図中の白矢印は電場の偏波方向を示す。

本事例では、SIESTAの光学解析機能を利用して、複屈折とバンド構造を評価しました。
複屈折の解析では、電場の偏波方向を(1,0,0)(0,1,0)(0,0,1)として、それぞれに対する屈折率をエネルギーを横軸にして求めました(図3)。 予想されるように偏波方向がXまたはY方向では、いずれも正三角形状の炭酸イオンCO3-に対して平行であることから、それぞれの屈折率は数値誤差の範囲で一致しました。これに対して偏波方向がZ方向のときは、炭酸イオンCO3-に対して垂直となり電気分極の効果が異なることから、屈折率も異なる値を採ることが分かります。
次に、光吸収の評価のため、カルサイトの消衰係数とエネルギーバンド構造の解析結果を図4と図5に示します。図4ではバンド間遷移による光吸収が6eVを過ぎたあたりから始まることが分かります。これは図5のバンドギャップに対応した結果であることが分かります。

図3 カルサイト屈折率のエネルギー依存性図3 カルサイト屈折率のエネルギー依存性

図4 カルサイトの消衰係数のエネルギー依存性図4 カルサイトの消衰係数のエネルギー依存性

図5 カルサイトのバンド構造(左)と状態密度 図4の吸収端に対応したエネルギーギャップ構造が確認できる。図5 カルサイトのバンド構造(左)と状態密度
図4の吸収端に対応したエネルギーギャップ構造が確認できる。

参考文献

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