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[解析事例] 樹脂流動解析と構造解析の統合事例

事例カテゴリ
構造連成

耐荷重性を要す部品の検討と対策事例のご紹介

TPVTechnologyLimitedは、世界最大のPCモニターメーカーであり、世界第4位の液晶テレビメーカーです。2012年4月TPVTechnologyLimitedグループは、Philips社との合弁事業(出資比率はTPV社が70%、Philips社が30%)としてPhilips社のテレビ事業を引き継ぎ、TPVisionを立ち上げました。今では、中国、インド、アメリカなど全世界向けのPhilips社のテレビの設計、製造、販売を行っています。

本事例では、TPVision社がMoldex3Dと構造解析CAEソフト(Abaqus)とを連成させLEDテレビ部品の製品強度確認と不具合の原因追求と、その対策を解決した例をご紹介します。

導入企業様 プロフィール
  • TPVTechnologyLimited
  • www.tpvaoc.com
  • ・業種 : 電子機器製造

概要

高品質のプラスチック製品製造の為、製品は落下試験、熱伝達試験などの所定の試験が行われ、使用目的に耐えうるかが検証されます。数々の厳しい仕様を満たすためには、それらの試験の過程で設計変更を余儀なくされる場合もあるため、低コストで高品質の製品を作るには製造工程に入る前に出来るだけ的確な設計にしておくことが必要不可欠です。

ここでの事例は、同社のLEDテレビの組立て作業中に、テレビの背面に位置するテレビスタンドとモニターをつなぐネック部分の部品について、高い頻度で接続部にあたるボスに「亀裂」が発生したケースをご紹介します。この部品は、耐荷重性が必要で、正確な強度計算に基づく設計を要する部品でした(図1参照)。

組立中に破損したLEDテレビスタンドのボス 図1. 組立中に破損したLEDテレビスタンドのボス

Moldex3D充填解析による欠陥(ウェルドライン)の発見

製品強度に与える影響を確認するため、まず、Moldex3Dを用いて充填解析を行ったところ、部品のボス部分にウェルドラインが発生しており、これが強度に影響していると考えられました。解析結果から、ウェルド発生個所の会合角度は30〜140°であり、使用されている材料から判断して、明らかに会合角度が狭くなっています。

Moldex3D充填解析によるフロント会合角(角度)表示 図2. Moldex3D充填解析によるフロント会合角(角度)表示

樹脂の溶解温度分布からの原因追究

さらに、充填解析の結果からボス中心部に10℃の温度差が生じていることも確認されました。このときの温度は溶融温度よりも約10℃低く、そのような条件下では、突起部周辺にウェルドラインが発生するのも当然で、二つの樹脂流動による会合角と温度差という条件が相まってウェルドラインの強度が低下していると考えられます。

ウェルドラインの原因となった充填温度の差 図3. ウェルドラインの原因となった充填温度の差

Moldex3DとAbaqusによる応力解析(構造連成)

機構設計の最適化と強度の向上を両立するため、トルクロック工程の応力解析に注目し、設計チームは、解析結果に基づいて亀裂発生の原因を突き止め、ピンポイントで設計を変更しました。さらにMoldex3Dの構造連成用インタフェースである、FEAインターフェースモジュールを使い材料特性をAbaqusフォーマットで出力し応力解析を行った結果から応力ひずみ線図(図5)による比較検討を行いました。

この解析で、応力のほとんどがロック位置にかかっていたことがわかりました。その最大応力は2.73kgf/mm2に達しており、残留応力は1.59e-03kgf/mm2でした(図4)。また、荷重曲線は、ロック位置に33kgfの荷重が作用するとき裂が生じることを示していました。そこで、設計チームはボスの形状を見直し、充填解析と応力解析を行いました。設計変更後にTPVTechnology社が実施した解析では、突起部の強度が33kgfから40kgfとなり、設計変更前と比べて21%も上昇しました。(表1)

Moldex3DFEAインターフェースを用い、Abaqusにて最大応力位置を特定 図4. Moldex3DFEAインターフェースを用い、Abaqusにて最大応力位置を特定

応力ひずみ線図 図5. 応力ひずみ線図

表1. 設計変更前後の改善率
  設計変更前 設計変更後 改善率
応力(kgf/mm^2) 2.72 2.18 19%↑
ひずみ(LE) 1.59 1.27 20%↑
最大破壊力(kgf) 33 40 21%↑

まとめ

TPVTechnology社は、Moldex3Dによってコストを抑えながら生産効率性を向上させる事に成功しました。当初の設計では不良率が30%でしたが、Moldex3Dの解析結果を生かして設計変更した結果、生産性は10%向上し、年間15万個の生産コストに当たる、$41,000のコスト削減に成功しました。TPVTechnology社はこの開発プロセスを他の製品にも適用し、Moldex3Dを最大限に活用してさらなる生産性の向上を目指す予定です。

事例一覧

  • ※Moldex3Dの開発元は CoreTech System Co., Ltd. です。
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