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[解析事例] 電子部品のアンバランスな流動、ウェルドライン、エアートラップの問題を一挙に解決

事例カテゴリ
充填

ディプトロニクス株式会社は1985年、台湾に設立され、スイッチ専業メーカーとして、ディップスイッチ、タクトスイッチ、ロータリースイッチ、マイクロスイッチ、スライドスイッチ、多機能スイッチ、LEDスイッチなどのさまざまなスイッチ製品の研究開発を行い、IATF 16949、ISO 14001認証を取得しています。その製品は、5大陸にわたる世界100か国以上で販売されています。(出典)

導入企業様 プロフィール

概要

T3Cタクトスイッチは、ディプトロニクスの電子スイッチの中で最も生産量の多い製品の1つです。電子スイッチはスイッチへの接触によって回路を導通させることを目的としているため、導通性はスイッチ製品において最重要性能となります。ですが、このタイプの製品では、プロセスにおいてエアートラップ、ウェルドライン、ショートショットなどの問題が発生しやすく、導通不良を引き起こす原因となっています。

ディプトロニクスチームは、Moldex3D解析を使用した設計変更により、充填バランスの取れた流動と成形サイクルの短縮を実現するとともに、エアートラップ、ウェルドライン、ショートショットといった外観不良を改善するソリューションを導き出しました。流動解析を使用することで、製品の歩留まり率向上、コストの削減が可能となります。

課題

  • ・エアートラップ、ウェルドライン、ショートショットの不良を改善
  • ・アンバランスな流動のランナーを改善
  • ・サイクルタイムの短縮

導入ソリューション

ディプトロニクスチームは、Moldex3D解析を使用してランナー位置の設計を変更し、製品充填時におけるバランスの取れた流動、残留応力の低減、成形サイクルの短縮を実現しました。続いて、オーバーフローエリアの追加と製品の外観設計を変更し、エアートラップ、ウェルドライン、ショートショットといった外観不良を改善しました。Moldex3Dを使用することで、最終的な全体の歩留まり率は39.68%向上し、生産サイクルも16%短縮されました。

成果

  • ・ウェルドラインの位置を効果的に制御
  • ・バランスの取れた流動
  • ・ランナー内の溶融樹脂を低減して材料を削減
  • ・成形サイクルの短縮
  • ・歩留まり率の向上

ケーススタディ

本事例でのT3Cタクトスイッチのサイズは3mm×2mm×0.6mmで、金型は8つのキャビティがある設計となります(図1)。内部キャビティの平均厚さは0.06〜0.09mmで、一般的な製品よりも難易度が高い加工技術が求められます。

図1 本事例製品の元の設計 図1 本事例製品の元の設計

Moldex3Dのシミュレーションから、アンバランスな流動が発生しているという問題が確認されました。フィッシュボーン形状のランナー設計により、内側の樹脂の流動速度が外側よりも速くなるという現象が発生していました(図2)。

図2 サブランナー部でのアンバランスな流動 図2 サブランナー部でのアンバランスな流動

また、ランナー部の最大冷却時間が長すぎるために、成形サイクルも7〜8秒と長くなっています(図3)。

図3 冷却時間が長すぎることを示すシミュレーション結果 図3 冷却時間が長すぎることを示すシミュレーション結果

さらに詳しく観察してみると、ウェルドライン(図4の赤い線で示す部分)が製品背面の凹穴部分に集中しており、これによって流体が浸透しやすくなり、製品の導通不良を引き起こしていることが確認できました。

図4 潜在的なウェルドラインの位置 図4 潜在的なウェルドラインの位置

このほか、最大せん断応力(図5)が約6MPaと高すぎるために、プラスチックに亀裂や過剰な残留応力が発生しています。

図5 製品の高すぎるせん断応力 図5 製品の高すぎるせん断応力

シミュレーション結果と実験から、アンバランスな流動に影響を与える主な原因はランナー設計であることが明らかになりました。そこで、Moldex3D解析と複数回にわたる実験検証の結果に基づき、元の設計に代わる新しいランナーを検討し、アンバランスな流動の改善策として、ディプトロニクスチームでは最終的にS字型ランナーの採用を決定しました(図6)。

図6 S字型の新しいランナー設計 図6 S字型の新しいランナー設計

マルチキャビティがバランスの取れたランナーとなることで、各キャビティの充填と保圧が同時に行われるようになります。キャビティの追加によって生産能力を向上させることができるため、マルチキャビティの金型では、バランスの取れたランナーが非常に重要となります。ディプトロニクスチームは、Moldex3Dを使用して新しいランナー設計を評価したところ、アンバランスな流動(図7)、高せん断応力、長すぎる成形サイクルといったこれまでの問題がすべて解決されていることを確認しました。

図7 アンバランスな流動の問題が大幅に改善 図7 アンバランスな流動の問題が大幅に改善

S字型ランナーへ変更したことにより、せん断応力は7MPaから3MPaへと低下し(図8a)、最大冷却時間も8秒から5秒に短縮されました(図8b)。

図8 (a)せん断応力の低減に成功、(b)成形サイクルの短縮に成功 図8 (a)せん断応力の低減に成功、(b)成形サイクルの短縮に成功

さらに、S字型ランナーシステムでは材料を11%節約することができ、製造コストの削減を実現しました(図9)。

図9 元の設計(左)と最適化された設計(右)のランナー重量比較 図9 元の設計(左)と最適化された設計(右)のランナー重量比較

ですが、ランナーシステムの変更だけではウェルドラインやエアートラップの問題解決には至らず、背面にある深さ0.03〜0.05mmの凹穴(図10a)やウェルドライン、エアートラップの問題を解決するために、外観を4つの外部エジェクターピン(図10b)に変更する必要がありました。

図10 背面の凹穴なし(a)、4つの外部エジェクターピン(b)に変更された最終的な最適化設計 図10 背面の凹穴なし(a)、4つの外部エジェクターピン(b)に変更された最終的な最適化設計

実際に製造された成形品が示すように、ウェルドラインの位置が成形品上部に移動しており(図11赤丸で示す部分)、元の設計から大幅に改善され、実際の検証後もシミュレーション結果とほぼ一致していることが確認できます。

図11 シミュレーションされたメルトフロントと実験結果がほぼ一致 図11 シミュレーションされたメルトフロントと実験結果がほぼ一致

さらに詳しく観察してみると、凹穴のある元の設計ではウェルドラインがはっきりと確認できる(図12赤丸で示す部分)のに対し、凹穴をなくし、エジェクターピンの設計を変更した新しい設計では、製造上の品質要件を満たしていることが確認できます。

図12 元の設計(左)と最適化された設計(右)のウェルドライン比較 図12 元の設計(左)と最適化された設計(右)のウェルドライン比較

結論

Moldex3Dはより低コストでの金型試作に加え、アンバランスな流動、ウェルドライン、エアートラップといった成形不良を早期に診断することができ、最終的に製造コストの削減、製造リスクの低減を実現します。

事例一覧

  • ※Moldex3Dの開発元は CoreTech System Co., Ltd. です。
  • ※記載されている製品およびサービスの名称は、それぞれの所有者の商標または登録商標です。
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