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[活用事例] 伝統工芸「有松・鳴海絞り」における布のしわ予測解析

伝統工芸の継承・保護にCAEが貢献できること

伝統工芸の継承・保護にCAEが貢献できること

名古屋市緑区の有松・鳴海地域で生産される有松・鳴海絞りという伝統工芸品があります。その伝承・保全のため、大同大学の篠原先生は伝統工芸を継承する方々と共に、絞りの機械化・効率化の研究をしています。

有松・鳴海絞りは糸で縛った布を染色することで、さまざまな模様を表現します。篠原先生らは模様を作り出す工程の一部機械化について取り組み、その中でLS-DYNAを用いたCAE解析を行いました。

伝統工芸の保全活動の中でどのようにCAEが利用されているのか、その活用事例をご紹介します。

あいちの伝統工芸品 有松・鳴海絞り

有松・鳴海絞りの保全にLS-DYNAを使用したきっかけ

大同大学 准教授 篠原主勲 先生

篠原先生 : 有松絞りの職人はコストや職人の高齢化に加え、後継者不足のため、その存在が消滅の危機にあります。伝統工芸を守るために何かしなければならないと思い、その支援を行っています。大分県に豊後(ぶんご)絞りというよく似た伝統工芸があります。今では復興したものの一時なくなってしまいそうな状況になりました。同じような状況にならないためにも、ものづくりの立場で支援を行う活動をしています。
「有松・鳴海絞りをロボットで再現できないか?」という依頼を受け、絞り工程の機械化を研究することになりました。この研究は2010年に大同大学 教授 西堀賢司先生とともに始め、現在も進めています。
絞りロボットの試作・改良を進めていくと、さまざまな課題が見つかります。例えば、絞り機械によって布のしわがどのように生じ、その影響が藍染めによる模様にどのように表れるかなどです。前職のJAXAで宇宙系の研究を行っていたこともあり、解析でこのような挙動を再現し機械化に生かせないかと考えました。大変形・衝突(接触)という面でLS-DYNAが向いているのではないかと思いました。使用経験がなく不安もありましたが、当初対応してくれた方が親切な対応してくれたことでLS-DYNAに決めました。

絞り機で発生する染め残りをCAEで再現

篠原先生 : 絞り機の機械化は作業者の技術力に依存することなく、毎回ほぼ同じ柄を作製できることや、染色後、キャップなどを利用し、糸よりも簡易に脱着可能であることなどをコンセプトとして開発しています。 実際の伝統工芸で行う絞りとキャップ絞りの違いが図1になります。このキャップに布を押し込む機械が図3です。このキャップに押し込んだ状態で染めると図4のようになり、染め残りは円状ではなくひし形を描くことがわかります。 本研究において、解析で検討したいことは数多くありますが、その一つとして、このようなひし形に染め残りが発生するような挙動を解析でも再現できないか検討しました。

図1. 伝統工芸で行う手絞りとキャップ絞りの違い 図1. 伝統工芸で行う手絞りとキャップ絞りの違い

図2. 樹脂キャップ絞り断面図 図2. 樹脂キャップ絞り断面図

図3. 絞り機の機械化 図3. 絞り機の機械化

図4. ひし形の染残り 図4. ひし形の染残り

篠原先生 : まず材料特性を計測しました。布の異方性を考慮するため、縫い目の縦・横・斜めと3種類取得します。 ここから応力-ひずみカーブに落とし込まなければならないため、再現解析やカーブフィッティングを行わなければなりませんが、今回はJ-Composites/Form Modelerを用いた試験同定機能を利用しました。これを利用すると、試験データを入力するだけで応力-ひずみカーブが自動作成されるため大変便利です(図5)。

図5. J-Composites/Form Modeler 自動変換機能 図5. J-Composites/Form Modeler 自動変換機能

篠原先生 : 次に布の押し込み解析を行います。J-Composites/Form Modelerでモデル化されたshell-膜モデルは布の挙動をとてもよく再現しています。布のモデル化を行う場合、曲げ剛性が非常に小さいので膜要素を使うことが一般的です。その場合、非現実的なしわが生じることがしばしばありますが、このshell-膜モデルは、大変形しながらも柔らかい材料の挙動をよく再現していると思います(図6)。また押し込まれた布の形状を見ると、ひし形になっているのがわかります(動画1)。

図6. 布の押し込み解析結果 図6. 布の押し込み解析結果

動画1. 織込まれた布の部位 動画1. 織込まれた布の部位

有松・鳴海絞りへの今後のCAEの活用

篠原先生 : 布の材料特性も考慮された解析が実現し、染め模様の検討などに生かせればと思います。これを用いることで、どのようなキャップ形状・材料特性・機械設計を行えば表現できるかなどの検討ができるのではないかと期待しています。今後は、布の模様だけではなく、LS-DYNAを幅広く評価に用いた検討をしていきたいです。

活用事例インタビュー協力
大同大学 工学部 機械システム工学科
准教授 篠原主勲 先生 研究内容:有松・鳴海絞り、空中ブランコロボット、宇宙構造物、振動解析、流体解析、構造解析、計算力学、計算工学、CAE、コンピュータシミュレーション、有限要素法(FEM)、最適設計、形状最適化 公式サイト:https://shinohara-lab.jimdo.com/
大同大学

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