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[活用事例]現物のボイド(空隙)を考慮した繊維複合材の破断解析

分野
  • 工業分野
モジュール
  • ScanIP
解析ソフト
  • LS-DYNA
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ボイドや界面剥離を考慮したGFRPモデルの破断シミュレーション

軽量で強度の高い繊維強化樹脂(FRP)は幅広い分野で利用されています。ガラス繊維を使用したGFRPは耐食性、電波透過性、電気絶縁性にも優れていますが、繊維強化樹脂は製造工程で意図しないボイドが発生することがあります。一般にボイドの近傍では応力集中に伴い早い段階で樹脂の強度低下を助長すると考えられています。ここでは、ガラス繊維含有率30%のポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂のX線CT測定を行い、ボイドのある現物モデルとボイドを埋めたモデルの破断進展の比較に加え、繊維と樹脂の界面剥離を考慮したモデルについても破断のタイミングや最大荷重がどのように変化するかをシミュレーションを実施した事例をご紹介します。

測定画像から繊維、樹脂、ボイドのモデル化

ScanIPにX線CTの測定画像をインポートし、繊維、樹脂、ボイドの形状(マスク)を作成します。作成したマスクからメッシュを生成し、LS-DYNAフォーマットで出力します。ScanIPには測定画像から繊維、樹脂、空隙をセグメンテーションする方法が複数用意されています。また画像のノイズを軽減できるフィルタ処理も豊富に実装されており、ここではグレースケールの閾値によるセグメンテーションと平滑化フィルタ、微小な浮島除去を行ってマスクを作成しました。

メッシュ生成

作成したマスクからメッシュを生成します。
ボイドがあるモデル、埋めたモデルともに要素数が約240万、メッシュ作成にかかった時間は12分でした。

繊維、樹脂、空隙のセグメンテーション
繊維、樹脂、空隙のセグメンテーション

繊維、樹脂、空隙のセグメンテーション

LS-DYNAによる有限要素解析

LS-PrePostを用いて一軸引張条件を付与します。界面はく離を考慮するモデルの場合、繊維と樹脂の界面に新しく接着要素を作成します。物性は
繊維:等方弾性体 破断無し
樹脂:多直線近似等方弾塑性体 相当塑性ひずみによる破断
界面:混合モードバイリニア型
としました。
解析時間は界面はく離なしの2つのモデルでは1.2時間、界面はく離あり(考慮する)モデルでは2.5時間でした。

一軸引張シミュレーションの境界条件一軸引張シミュレーションの境界条件

解析結果

解析結果を確認します。細かく出力した変形図から破断起点を確認することや、樹脂の塑性ひずみ分布コンター表示、端部引張荷重-端部変位曲線を確認します。

ボイド、界面はく離有無での破断挙動の差

界面はく離を考慮しないモデルで、ボイド有無で樹脂破断挙動の差を確認します。
ボイドの無いモデルと比較し、ボイドのあるモデルは最大荷重を迎えるタイミングが早く、最大荷重も10%程度低くなっています。
特定断面で相当塑性ひずみ分布をコンター表示すると、ボイド周辺から塑性変形し、き裂が進展していることが確認できます。
ボイドを埋めたモデルで、界面はく離有無で樹脂破断挙動の差を確認します。
界面はく離の無いモデルと比較し、界面はく離のあるモデルは最大荷重を迎えるタイミングが早く、最大荷重も70%程度低くなっています。
特定断面で塑性ひずみ分布をコンター表示すると、樹脂の塑性ひずみが大きくなる前に界面はく離が進行し、低い最大荷重で破断していることが確認できます。

ボイド無し(上)、有り(下)の比較 塑性ひずみ分布と応力ひずみ曲線

ボイド無し(上)、有り(下)の比較
塑性ひずみ分布と応力ひずみ曲線

界面はく離無し(上)、有り(下)の比較 断面塑性ひずみ分布と応力ひずみ曲線

界面はく離無し(上)、有り(下)の比較
断面塑性ひずみ分布と応力ひずみ曲線

メソスケールでの構造変化がマクロ特性に大きく影響を与える可能性があり、現物のボイドを考慮したモデルで解析を実施する意義は大きいと言えます。
対象物のボイドが発生した場所や与える条件により強度差が異なることも調査を行えば、非破壊検査で製品の安全性や強度を推測できるようになります。

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