蒸着膜のシミュレーション
有機ELなどの有機デバイスの作成に用いられる蒸着法において、分子の形状が膜中での分子配向に与える影響を解析しました。TPDとBSP-Czという2種類の分子を用い、銀基板上への蒸着過程を分子動力学シ(MD)ミュレーションで再現しました。その結果、BSP-Czの方が基板に垂直な配向を取りやすい傾向があり、分子構造が膜中配向に影響することが確認されました。
解析・利用例のポイント
- 有機ELをターゲットとした蒸着膜のMDシミュレーション
- 分子構造とデバイス特性の関係
有機ELをターゲットとした蒸着膜のMDシミュレーション
蒸着膜形成に用いた2種類の分子TPDとBSP-Czの構造が示されています。TPDは非線形構造、BSP-Czは直線状構造を持ち、分子形状が膜中での配向性に影響を与えることが分かります。下段にはTPDの蒸着初期と後期の分子配置が示され、膜形成の進行が視覚的に確認できます。
上:計算に用いた2種類の分子。下:TPDの蒸着シミュレーション(左:初期、右:後期)
分子構造とデバイス特性の関係
蒸着膜中の分子配向性を評価するための配向秩序パラメータPの解析結果が示されています。P=1は参照軸に平行、P=-0.5は垂直を示し、BSP-Czの方がZ軸に垂直(基板に平行)な配置を取りやすいことが分かります。分子構造が膜中の秩序性に与える影響が明確に示されています。
左:配向秩序パラメータの解析結果。右:各分子の蒸着膜の構造(上:TPD、下:BSP-Cz)
参考文献
- D. Yokoyama, Journal of Materials Chemistry, 21, 19187-19202, (2011)
- H. Heinz, et al., J. Phys. Chem. C, 112, 17281-17290, (2008)
解析内容の詳細
関連情報

