DIFFCRASHは、Ansys LS-DYNAをはじめとする有限要素法ソルバーで得られた複数の解析結果をもとに、統計的手法を活用してばらつきの度合いを可視化できる解析支援ソフトウェアです。近年、製造工程や材料特性のわずかな変動が製品性能に大きく影響する中で、単一の解析結果だけでは設計の信頼性を十分に評価できないという課題があります。DIFFCRASHを用いることで、同じ解析条件で得られた複数の結果から、変形挙動のばらつきや分岐の発生タイミングを明確に確認することが可能です。また、ばらつきの原因となる要素(トリガー)を効率的に抽出できるため、従来は経験や勘に頼っていた設計上の不確実性を定量的に評価できます。結果はソルバー対応のポストプロセッサで直感的に可視化でき、設計者が迅速に問題点を把握できる点も大きな特長です。
DIFFCRASHは単にばらつきを示すだけでなく、その分析結果を設計改善に活かせる点が大きな強みです。材料特性やスポット溶接の破断閾値などにばらつきを与えて解析し、20サンプル以上の計算結果を比較することで、製造工程で不可避なばらつきを考慮した実用的な設計評価が可能となります。その知見をもとに構造設計を見直すことで、性能の安定性を確保しつつ、過剰な安全マージンに頼らない効率的な設計を実現できます。従来であれば製造段階でのばらつき低減に多大なコストを割いていた部分を、設計段階で吸収する「ロバスト設計」へと転換できるのです。実際の事例では、DIFFCRASHの導入により車体衝突解析の結果ばらつきを大幅に抑制し、製品品質と開発効率の両立を実現しています。