自動車の衝突安全設計では、シートベルトやエアバッグの作動条件を最適化し、乗員頭部の傷害指標であるHIC(Head Injury Criterion)を低減することが重要です。
一方で、リトラクタ荷重、エアバッグのマスフローレート、作動タイミングなど、評価すべき設計パラメータは多岐にわたります。これらを組み合わせて最適条件を探索するには多数のCAE解析が必要となり、解析ケース数の増加や計算時間の長期化が課題となります。
また、応答曲面法などの従来の近似手法ではHIC値の予測は可能でも、HIC算出の根拠となる加速度時刻歴や衝突時の挙動変化まで十分に再現できない場合があります。そのため、予測結果の妥当性を確認しにくく、設計判断へ活用しづらいケースがありました。
こうした背景から、限られた解析データをもとにHIC値と時刻歴を高精度に予測し、設計空間の探索を効率化できる予測モデルの活用が求められています。
- 設計条件の組み合わせが多く、解析ケース数と計算時間が増大する
- 限られた開発期間内で、最適条件を効率よく探索する必要がある
- HIC値だけでなく、時刻歴まで確認できる予測モデルが求められる
設計条件の組み合わせが多く、解析ケース数と計算時間が増大する
衝突安全設計では、複数の設計パラメータを組み合わせながら、HICが小さくなる条件を探索します。しかし、条件数が増えるほど解析ケースも増加し、すべてを詳細解析で確認するには多くの時間とリソースが必要になります。このため、現実的な開発スケジュールの中では、検討できる条件数が限られ、十分な探索ができないという課題が生じます。
頭部加速度の時刻歴(従来近似手法では、時刻歴の予測はできない)
限られた開発期間内で、最適条件を効率よく探索する必要がある
スレッド試験を模した解析では、1ケースごとの計算時間が長くなる場合があり、解析時間が設計検討のボトルネックになります。
解析担当者が結果を出すまで設計判断が進まない、追加条件の検討に時間がかかる、といった状況では、開発全体のリードタイムにも影響します。
そのため、詳細解析の精度を活かしながら、より短時間で多くの条件を評価できる仕組みが求められます。
HIC値だけでなく、時刻歴まで確認できる予測モデルが求められる
従来の応答曲面法などの近似手法で、HIC値を予測することは可能です。
しかし、HIC算出のもとになる加速度の時刻歴を再現できない場合、予測結果の妥当性が判断できない、設計変更による挙動の違いも把握しにくいといった理由から、設計判断に活かしきれませんでした。
この課題を解決するためには、衝突時の挙動や波形の傾向まで確認できることが必要です。

