電動車や蓄電システムの普及に伴い、リチウムイオン電池には高容量化・高出力化・高信頼化が求められています。一方で、充放電時には活物質へのリチウムイオンの出入りに伴って電極が膨張・収縮し、セル内部に応力やひずみが発生します。これらの現象はセル寿命や安全性、さらにはモジュールやパックの設計にも大きな影響を及ぼします。
しかし、実験ではセル内部で起きている発熱や膨張挙動を直接観察することが難しく、設計変更のたびに試作と評価を繰り返す必要がありました。また、実機搭載時には拘束条件や温度環境によって変形挙動が変化するため、開発初期から内部状態を把握しながら適切な設計を進められる技術が求められています。
- 充放電による膨張量を把握したい
- 試作評価の工数を削減したい
- 搭載時の拘束影響を評価したい
セル内部の膨張挙動を把握したい
リチウムイオン電池では、充放電に伴う活物質の体積変化によってセル全体が膨張・収縮します。しかし、外部から測定できるのはセル表面の変形や温度が中心であり、電極内部や積層構造内部でどのような変化が起きているかを直接確認することは容易ではありません。
特に大型セルでは充電率や温度条件に応じて変形量が変化するため、設計段階で十分な知見を得るには多くの実験が必要になります。その結果、安全側に余裕を持たせすぎた設計になったり、潜在的なリスクを見逃したりする可能性があります。セル内部の状態を可視化し、膨張メカニズムを把握しながら設計を進められる手法が求められています。
バッテリー試験サンプル形状
試作と評価の繰り返しを減らしたい
バッテリー開発では、充放電性能、発熱特性、膨張量などの複数の評価を行いながら設計を進めます。しかし、それぞれの現象が相互に影響するため、評価項目ごとに試験を実施するだけでは十分な理解が得られず、設計変更のたびに試作品を製作して検証を繰り返すケースが少なくありません。
また、実験では電流分布や内部温度分布など詳細な内部情報の取得が難しく、原因分析にも時間を要します。開発期間短縮の要求が高まる中で、試作回数を抑えながら設計品質を向上できるアプローチが必要になっています。
正極・負極の放電と充電状態における合材層の厚み測定
モジュール搭載時の拘束影響を知りたい
実際のバッテリーセルはモジュールやパックに組み込まれた状態で使用されるため、充放電時の膨張は周辺構造によって拘束されます。この拘束により内部各層に応力が発生し、セパレータ(正極と負極を隔てる部材)の圧縮や電極の変形を引き起こす可能性があります。しかし、セル内部の各部材がどのように変形するかを実験だけで評価することは容易ではありません。
また、必要以上の拘束は重量増加やコスト増加につながる一方で、拘束が不足すると信頼性低下を招く可能性があります。そのため、適切な拘束条件や必要な拘束力を事前に把握することが重要な課題となっています。
車載状態を模擬する解析モデル

