EVやHEVをはじめ、さまざまな製品で電池の大容量化と高出力化が進むなか、衝突や変形、異物の侵入などによる内部短絡を起点とした熱暴走リスクを適切に評価することが重要になっています。各国の安全基準では、電池セルに内部短絡を発生させ、その際の温度、荷重、変形、発煙、発火などの挙動を確認する限界試験が規定されています。
一方、試験時には急激な温度上昇やガスの発生、発煙、発火などが生じる可能性があるため、試験設備には厳しい保安対策が求められます。自社内で試験環境を構築する場合、安全性を確保した専用試験室や防護設備、計測機器などへの大きな投資が必要です。さらに、熱暴走に至る過程を詳細に把握するには、高速度撮影や変形計測を含む複数のデータを同期して取得できる評価環境も欠かせません。
- 厳しい保安要件を満たす試験環境
- 専用設備導入に伴う投資負担
- 熱暴走過程を捉える多面的計測
熱暴走を想定した安全環境の確保
限界試験では、過充電や加熱、電池セルの変形によって内部短絡が発生し、セルの状態によっては急激な温度上昇、ガスの放出、発煙、発火などにつながる可能性があります。そのため、通常の材料試験とは異なり、装置の堅牢性だけでなく、試験中に生じる現象を試験領域の内部に留め、作業者や周辺設備への影響を抑えるための安全環境が必要です。また、試験片の設置や交換、試験条件の設定、試験後の確認といった一連の作業についても、危険源との接触をできる限り抑える運用が求められます。
こうした保安要件を個別に検討し、試験装置、防護構造、計測機器および運用方法を組み合わせて試験環境を構築するには、専門的な知見が不可欠です。安全性と試験の実施しやすさを両立できる設備構成をどのように実現するかが、大きな課題となります。
専用試験設備への大きな投資負担
電池の限界試験を自社内で実施するには、試験機本体に加えて、想定される発煙や発火などに対応する防護設備、試験領域を隔離する設備、現象を記録する計測機器などを整備する必要があります。用途ごとに専用装置を導入する場合、設備費だけでなく、設置場所の確保、周辺設備の整備、保守、点検などを含めた負担が大きくなります。
さらに、通常の材料試験、高温または低温環境での試験、電池試験をそれぞれ異なる設備で行う構成では、装置ごとの操作習得や試験準備、試験片および計測機器の移動にも手間がかかります。試験の種類が増えるほど設備が分散し、運用効率や設備稼働率が低下する可能性もあります。限られた設置スペースと投資の範囲内で、安全性を確保しながら多様な試験要求に対応できる試験環境の構築が求められます。

