課題解決事例

コンクリート構造物が衝撃を受けたときの挙動を評価

解決のポイント
  • 動的挙動の再現と可視化
  • 条件を変えた比較検討

動的挙動の再現と可視化

本事例では、動解析(陽解法)を用いて、衝撃を受けた構造物の応答を解析しました。接触した瞬間からの変形や振動、荷重の伝達を時系列で出力し、荷重の立ち上がりや損傷が広がっていく過程を、連続的に可視化しています。これにより、時間の経過とともに、構造物のどこに、どのような損傷が生じるのかを追うことができます。静解析で得られるのは、ある条件でのつり合った状態の結果ですが、動解析では、ある瞬間の最大値だけでなく、挙動全体の推移として現象を捉えられる点が大きな違いです。

さらに、静解析による評価結果と並べて比較することで、これまで静解析に取り組んでこられた方にも、衝撃特有の応答が結果にどう表れるかを直感的に把握いただけます。こうした可視化を通じて、実現象をより詳細に捉えた健全性評価につなげられます。

動解析(赤)と準静解析(青)による荷重-変位曲線の比較

動解析(赤)と準静解析(青)による荷重-変位曲線の比較

条件を変えた比較検討

動解析では、載荷条件を変えるだけで、構造物の応答がどう変化するかを確認できます。例えば、一度だけ衝撃を与える「単一載荷」と、損傷が残った状態で再び衝撃を与える「再載荷」とでは、変形量や損傷の広がりに違いが生じます。こうした条件の違いを実験で再現するには、試験体やセットアップを都度用意する必要があり、多くのコストと時間がかかります。一方、解析であれば、初期状態や載荷履歴を設定し直すだけで、同じモデルを用いて複数の条件を効率的に比較できます。これにより、実験では確認が難しい繰り返し衝撃の影響や、損傷の蓄積による挙動の変化も、体系的に検討できるようになります。

下図のコンター図は、単一載荷と再載荷における変形の違いを示したものです。同じモデルを用いて条件を変えることで、条件の差が結果に与える影響を比較できます。

コンクリート版の主ひずみの比較(左:単一載荷、右:再載荷)

まとめ

静解析から動解析へ:コンクリート構造物の衝撃時健全性評価

橋梁やトンネルなどのコンクリート構造物では、落下物や飛来物による突発的な衝撃を受けた後も、安全に使い続けられるかを判断する必要があります。しかし、実物大での衝撃試験は規模やコストの面で難しく、これまで広く用いられてきた静解析では、慣性力や応力波の伝播、ひずみ速度効果といった衝撃特有の動的な挙動を評価できないという課題がありました。

本事例では、時間の経過を追いながら現象を再現できる動解析(陽解法)を用いて、衝突の瞬間から始まる変形・振動・荷重伝達を時刻歴で追跡し、損傷が広がる過程を連続的に可視化しました。加えて、単一載荷と再載荷のように載荷条件を変えた比較検討を、同じモデルの設定を変更するだけで効率的に実施しています。これにより、静解析だけでは捉えられなかった挙動全体の推移を把握でき、多様な条件を試験に頼らず効率的に比較できるようになりました。静解析に取り組んでこられたエンジニアの方も、既存の知見を活かしながら、動解析による評価を検討できます。

なお、本事例の動解析には、陽解法による動的解析を得意とする汎用構造解析ソルバー「Ansys LS-DYNA」を使用しています。

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