試作メーカーにおけるわれ・しわ(予測&対策)のCAE活用
A社様では、自動車OEM系の試作部品を受注し、ほとんどすべてを内製化しています。
短納期が求められる試作部品の金型製作に、2003年よりJSTAMP/NVを導入して活用を開始しました。試作部品の特徴から、せん断はレーザーで行うため、成形金型の製作にのみ適用しています。
導入背景
導入の背景は、ベテランのプレス技術者が不足したため、若手だけで対応することにありました。同時に、ハイテン部品の増加にともない、一般材より厳しいプレス条件を事前に予測・検討する必要がありました。
たとえば2週間の受注の場合には、以下のようなタイトな日程になります。
- 第1週:CAD/CAM/CAE&金型製作
- 第2週:プレス&組み付け
その第1週のCAD/CAM/CAEが、D・Q(納期・品質)を確保するためのキーと言えます。
運用体制
CAEは主に、図2の様なわれ・しわの予測に活用しており、スプリングバックは一部に適用しています。CAD/CAM/CAEの期間が短いため、1ジョブの計算時間が数時間程度になる様に、解析モデルを設定・運用しています。また前述のように、せん断は正寸でレーザー加工するので、トリムライン展開は適用していません。
操作はCAD/CAM出身の4名で、平均20部品/月についてCAD/CAM/CAEの全ての業務を行っています。システムの稼動は、JSOLでの教育後に2~3カ月の社内OJTを経て、スムーズに立ち上がりました。データの授受に関しても、CADとのIGESフォーマット変換でほとんど問題は起きていません。
導入効果
従来、社内で工程を決めるときには、製品形状の金型を製作・プレスして、その結果によって工程・DRAW形状を設定していました。そのため、トライ&エラーの繰り返しに多大な工数・日程のロスが発生していました。それをCAEで事前に検証できるようになったので、図3のようにロスが半減しています。
一方、カスタマーから工程が指定された時には、これまではその通りに金型製作をして来ました。しかし、現在ではCAEを活用する方法が定着したため、自社からより良い工程を提案し、採用されるようになって来ました。
今や、CAEはCAD/CAMと同様に、なくてはならない物となっています。導入効果は、若手の経験不足を補って、余りあるほどだと言えます。今後は、しわ・われ以外に、ハイテンでのスプリングバックの解析も手掛ける必要があります。
