
CAE Technical Library 注目機能紹介 - CAE技術情報ライブラリ
2020年6月30日に、IGA Tool Ver4.1.1がリリースされました。
IGA Toolは、オリジナルの CAD 形状からLS-DYNA IGAに対応したモデル(以降、IGAモデルと呼称)への変換を担うソフトウエアです。LS-DYNA のIGAモデルには大別して3種のタイプ、すなわちIGA Type1、Type2、Type3があり、IGA Tool Ver4.1.1ですべての変換が可能となりました。
IGA Type1 | IGA Type2 | IGA Type3 | |
![]() |
![]() |
![]() |
|
---|---|---|---|
実装Version | Ver2.2 | Ver3.1.1.1 | Ver4.1.1 |
主な用途 | IGA Solidを作成する際の断面への適用 | 1面化が難しいモデルへの適用 | 1面化が可能なモデルへの適用 |
長所 | 自動アルゴリズムの搭載 | パッチ数の削減 | モデル形状への依存性の緩和 |
主な課題 | バッジ数が多い | モデル形状への依存性が高い | バッジの接合機能が必要 |
使用頻度 | ![]() |
各Typeの詳細は、別途資料をご用意しております。ご希望の方は、こちらからお問い合わせください。
IGA Tool の役割や基本的な機能については、以前のCAE 技術情報ライブラリでご紹介しました。
今回は、IGA Tool Ver4.1.1 の新機能と今後予定される機能拡張について、ご紹介いたします。
旧Versionにおける変換機能とその課題
LS-DYNA IGA では、オリジナルのCAD形状を、NURBS パッチと呼ばれる4辺面(4辺を有する面)で構成されるIGAモデルに変換する必要があります。旧VersionのIGA ToolではIGA Type1とIGA Type2への変換機能が実装されています。
IGA Type1は、クロスフィールドと呼ばれる概念を用いて対象の CAD 形状を4辺面に自動分割したIGAモデルです。IGA Type1への変換では、ターゲットモデルの形状次第で不良パッチが発生し、ユーザーが手動で修正する必要があるため、ユーザビリティの観点で課題を抱えているといえます。
IGA Type2は、トリミングカーブを用いて、モデル内部に存在する孔や空隙を表現するIGAモデルです。IGA Type2への変換では、前述のIGA Type1変換の課題を回避することが可能です。しかし、対象の形状やモデルの分割線によっては、Knotセグメントの狭小化や、Control Point配置の乱れなどの課題があります。
IGA Type1とType2、それぞれの課題にアプローチするため、IGA Tool Ver4.1.1には2つの機能が実装されました。
IGA Tool Ver4.1.1の可用性
1. Control Pointのローカルリファインメント機能
Control Pointの配置の乱れを改善するためのローカルリファインメント機能が実装されました。
Control Pointの乱れは、LS-DYNA IGAによる解析において、Negative Jacobian Errorの原因となるケースがあります。本機能を用いて、配置を局所的に改善することで解析上のエラーを回避することができるようになりました。
Fig.2 Control Pointのローカルリファインメント機能
2. IGA Type3への変換機能
新たなモデルタイプであるIGA Type3の変換機能が実装されました。
複数のSurfaceを1面でモデル化し、外形線も、モデル内部のトリム形状と同様に、トリミングカーブを用いて表現されます。根本課題となっていた、オリジナルCAD形状の依存性を緩和するとともに、変換速度の向上、解析の精度向上に貢献するモデルタイプです。
Fig.3 オリジナルCADデータからIGA Type3への変換
このIGA Type3は、LS-DYNAの開発元であるLST社も標準的なモデル化として推奨とする方針で、今後の主流となります。現在、LST社ではType3によるモデル化を想定した、境界条件の設定機能、NURBS Patchの接合機能の開発を進めており、今後その使用頻度が高まることが予想されます。
IGA Tool の今後の展開
今回リリースしたIGA Tool Ver4.1.1で、すべてのIGAモデルタイプへの変換が可能になりました。次期Version以降では、今後主流となるType3について、さらなる変換精度および変換速度の向上を課題として取り組んでいく方針です。
本記事ではIGA Shellの変換にフォーカスをあてましたが、IGA Solidへの期待も高まっています。
IGA Solidも、IGA Shellと同様、高次のNURBSを基底関数としており、精度向上の観点で期待されているほか、FEM Solid複数層でモデル化していたものを高次関数の利点を生かし1層でモデル化できるため、計算コストの観点でも注目を集めています。
これまで、IGA Toolでは、一定断面形状の押し出し(1 Lineスウィープ)によるIGA Solidの作成および、穴あけ機能のみをサポートしていましたが、シェルオフセットによる作成、2 Lineスウィープによる作成も、将来的に実装される見込みです。
IGA Tool の次期Version は、2021年のリリースを予定しています。
IGA Tool に関するお問い合わせ、および、IGA Type1~3の特長に関する資料をご希望の際は、こちらからお問い合わせください。
Isogeometric Analysis(IGA)は、近年、Design(CAD)と Analysis(CAE)の親和性を高める解析手法の1つとして、注目を浴びています。メッシュ生成による離散化を必要とせず、CADの形状表現で用いられるNURBSとよばれる高次関数を近似の形状関数としてそのまま使用するため、メッシュ生成工数の削減に加え、より高精度な解を導出するスキームとしても期待されています。実際のところ、産業界で使用される CAD からシームレスに CAE に移行することは現状難しく、複雑な形状の CAD を IGA に適したデータに効率的に変換するツールが必要となります。
この変換の役割を担うのが、「IGA Tool」です。IGA Tool の役割や基本的な機能、IGA モデル Type の詳細については、こちらを参照してください。