橘サイバー研究所
Vol.18

曲がってもいいじゃないか

2010.04.30
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著者プロフィール
橘 英三郎
  • 大阪大学名誉教授 建築工学

俺は曲がったことは金輪際きれーだ、という方はスキップしていただきたい。

かって、新しく私の研究室に配属されたゼミの学生全員に単位数を聞いたところ、ある学生が卒業に必要な単位に大分足りなかった。そこで4年の前半に少し多めに受講するようにアドバイスした。ところがその学生が卒業の時「先生のおかげで4単位も余計にとった」と不服そうな顔。その余分な単位のためアルバイトする時間が減ったという。

ところで、この学生はある意味で宇宙の理にかなっている。荒っぽく言えば、常にギリギリ「釣り合っている」ように行動すれば消費エネルギーは少なくて済む。その学生だけではなく太陽や月や地球もそのように運動しており、力学的にはエネルギーは極小となり、場合によっては最小であることも証明できる。

まわりくどくなったが、力学の問題は力の釣り合いで解くのではなくエネルギーの最小化からも直接解くことができる。

いま、図1に示すように一枚のシェル要素abcの上に一本のケーブル要素deがのっている場合について考える。

[図1]
[図1]

ケーブル要素の両端を下げて、図2のようになったとする。f,gはケーブルが2辺と交差する節点である。要素の途中で折れ曲がっている。このように折れ曲がってもよい要素を考えられないだろうか?

[図2]
[図2]

話は簡単である。

全ての移動可能な節点の変位量を ui,i=1,..,N で表し、それにより系全体のエネルギーEを表す。それには歪エネルギーなどの内部仕事や外力仕事も含まれる。それを最小化する変位の組み合わせが解となる。

E=E(ui  ---->  Minimum      ui,i=1,..,N

つまり、多変数関数の最小化問題となるわけだ。
これについては非線形計画法の分野で種々のアルゴリズムが提案されているので適当に選べば良い。実際には幾何学的非線形、材料非線形などがからむので、最小化すべき関数はエネルギーの増分とし、変数は変位の増分とすると都合が良い。

図3は膜構造の解析に適用した例である。膜に空気圧を加えて膨らんだところを風でパタパタしないように2本のケーブルで押さえている。後楽園球場のビッグエッグの屋根などもこの形式だ。

[図3] ケーブル補強膜構造
[図3] ケーブル補強膜構造
[図4] ズームアップしたもの
[図4] ズームアップしたもの

ところで、人生を、ギリギリのところで釣り合っている状態を歩むのが良いかどうかは何ともいえない。無駄は多分飛躍への扉を開いてくれる唯一の鍵ともなるからだ。

参考文献
  1. H.Sakai, E.Tachibana, "Numerical analysis of cable reinforced membrane structures using Foldable Finite Elements", 膜構造研究論文集'95.
  2. T.Matsumura, K.Oda, E.Tachibana, "Finite element analysis of cable reinforced membrane structures with the use of Bendable Element", Proc. of the IASS Int. Symposium '97 on Shell & Spatial Structures,1997
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