- 大阪大学名誉教授 建築工学
講義で学生と波長や周期が合わないと何人かが居眠りをはじめる。声をからして発信しても、受け取り側の波長とずれていたら学生の耳から入力されない。
地震災害も似ている。建物も地震の周期とずらしておけば地震が建物を壊しに来ても空振りに終わる。兵庫県南部地震のような内陸性の地震の卓越周期はほぼ1秒以内だ。残念なことに中低層のビルの1次固有周期もだいたいその前後にある。フランスで考案された免震構造では積層ゴム(写真-1)などを低層部に並べて置いて免震層を形成し、その上に上層階を載せる。それにより建物の1次固有周期を3秒程度に延ばし共振を避ける。地震時には免震層から上は「剛体的に揺れる」ので、クラックなどによる損傷をあまり受けない。ガタガタガタといった激しい揺れは、これによる免震効果でユーラユーラした揺れに変わる。ただし、地震の後も揺れが続くので、鉛ダンパー(写真-2)や鋼製履歴ダンパー(写真-3)などを併設したりする。
写真-1で縞模様の黒い部分がゴムで、鉄板に交互に挟まれ接着剤で固着されている。ゴムは変形時の体積変化はほとんど無いので、上下方向の圧縮には十分に剛であり、水平方向にはゴムの剪断剛性に近い柔な特性を有し、400%近い剪断ひずみに耐える。
それらダンパーの代わりにオイルダンパーや高減衰ゴムを用いるものなどがあり、又、積層ゴムの代わりに転がり支承を用いるものなど、免震装置についてはまさに特許の花盛りなのである。
ところで、免震構造には滑りを利用したものも考えられている[1]。それらは、地震のあとに元の位置に戻ることを前提としているため、滑り面を球面にしたり、復元力機構が付加されたりしている。
しかし、もし滑り免震で元の位置に戻らなくても良いとすればどうであろうか?何か滑るものの台に建物を「置くだけ」にする。元に戻る復元力機構やダンパーなどいっさい取り付けない。摩擦係数については、風で建物が吹き寄せられないよう、又、小さい地震で頻繁に滑らないよう、約0.15程度とする。
めったにこない大きな地震の時だけ滑ることにより被害を避け、建物がズレてしまったらジャッキで戻すことにする。もっとも、昔からお寺などでは石の台に載せてあるだけの場合が多い。へたに、きちんと止めると地震の際に応力が伝わり上部構造に悪さをする。それならズレたほうが良いのかもしれない。
筆者らはこれにならい「置くだけ免震」の開発を行っている[2]~[5]。写真-4は振動台を用いての実験風景である。4隅には6cm角の鉄板にモリブデン系の表面処理したものを載せた束を固定し、その上から、やはり4隅に60cm角の鉄板にモリブデン系の表面処理したものをとりつけて、そのまま置いて実験を行った。
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