橘サイバー研究所
Vol.10

ローマ字には気をつけて

2008.11.17
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著者プロフィール
橘 英三郎
  • 大阪大学名誉教授 建築工学

「プロフェッサー テイキベイナ」司会者からの言葉が私にはこう聞こえた。

隣の席の金多先生(現京大名誉教授)が「橘さんのことですよ」と教えてくれたので慌てて演壇に上がった。慌てたのは会議の発表順や時間が大幅に変更されてしまったせいもある。

アテネで開かれたヨーロッパ地震工学会議(1982)で当時助手であった私は、どのようにしゃべったかは覚えていないが、ギリシャ語の同時通訳の女性が機関銃のようにしゃべっていた記憶が残っている。

ところで発音について一つの疑問は、医師であり宣教師でもあったヘボン博士が提唱したローマ字についてである。

私は小学生の頃、漠然と英語はローマ字のようなものだろうと高を括っていた。中学になって、英語の時間に name はナメでなく make はマケでないことにクシュンとなったが、そんなものと開き直り、特に気にもかけずに過ごしてきた。

英語では「a」は「ア」だけではなく文字通り「エイ」と読む場合も多い。会議のときの司会者は Tachibana をどう読むか迷い結局テイキベイナとなったのであろう。

ローマ字読みは、ローマ帝国やバチカンや、ひいてはラテン語との関係が深い。研究社の羅和辞典にもラテン語の発音はヘボン式ローマ字の発音にほとんど等しいとある。

前述の「発音について一つの疑問」というのは、当時、古語になりつつあったラテン語読みに似せたヘボン式ローマ字が何ゆえに日本で採用されたのかという疑問である。

もしかしたらヘボン博士はバチカンの僧侶の常用語であるラテン語の素養を日本人にも植えつけようとしたのだろうか。一般に布教活動は善意に基づいているのであろうが、時として植民地獲得の布石ともなってきた。

話が逸れたが、良かれ悪しかれ、ヘボン博士のローマ字表記やローマ字発音が日本人の英語下手の元凶になっているような気がする。スペルと耳から入る発音が大きく異なるからだ。

ただしそれは、私の英語下手の責任転嫁かも知れない。

今でも外国で満員電車から降りるときは「揚げ豆腐!」と叫んでいるくらいで、ちゃんとした英語発音にはからっきし自信がないのである。

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