- 大阪大学名誉教授 建築工学
「エルセントロを知らないなんて」
建築構造の分野ではこう言われても仕方がない。
昭和43年に霞ヶ関ビルが竣工して以来、日本にも沢山の超高層ビルが建てられてきた。そして、その殆どがこのエルセントロと深く関っている。
というのも、超高層ビルの耐震設計ではコンピュータにより動的解析がなされるが、想定荷重の一つとしてよく用いられるのがこのエルセントロと名づけられた地震記録波形である。
エルセントロ(El Centro)とはカリフォルニア州の南部にある町の名前であり、映画「トップガン」などの舞台となった軍港サンディエゴから東に150kmほど離れたところにある。そこの変電所で1940年に記録されたものだ。多くの真面目な構造設計者はメッカを訪れるようにそこを訪れている。
ただし、サンディエゴから南へ約20kmのティファナに行き、昼食にタコスを食べてサンディエゴに戻るといった私のような真面目でないフトドキ者もいる。(もっとも、前の稿の「ダイナとの出会い」でも書いたように、UCSDでライスナー教授やベンソン助教授(現在は教授)との懇談といった主目的は済ませた後だったし、次のような理由からエルセントロを信仰していたわけでもないので)
二つの図を見ていただきたい。
これがエルセントロの加速度記録波形である。上の三つの波形が超高層の設計などで用いられるもので、上から順に上下成分、南北成分、東西成分となる。
図では小さくて分からないが南北成分が400ガル(cm/sec2)近くある初めての強震記録である。しかし、この波形は、実際の加速度記録とはとても言えないしろものである。その下の印刷ミスのような図がインク式のペンレコーダで得られた「実際」の加速度記録であり、上の三つの図はそれから捏造?されたものである。
まあ、地震なんて水もので、どうせ分からないので、適当な波形でよいとする見方もあるが、「エルセントロを知らないなんて」などと言う人の何人がこの偽装事件を知っているかどうかは神のみぞ知る、である。
- 上図は、M.D.Trifunac and J.N.Brune, "Complexity of energy release during the Imperial Valley, California, Earthquake of 1940", Bulletin of the Seismological Society of America, Vol.60, 1970. より
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