著者プロフィール
橘 英三郎
- 大阪大学名誉教授 建築工学
我々が普通に歩く「道」について考えてみよう。次の命題は正しいとして良いのだろうか?
命題:
「特にひにくれた歩き方をしない限り道は行きと帰りで歩く向きが逆になる」
このような真偽が人生にとって何の関係がある、などと言われるかもしれない。もっともである。私も次のことに気がつかない限り、考えることもなかった。ところが、ある日ふと、行きも帰りも同じ方向に歩いている道のあることに気がついた。
往きは阪急南茨木から淡路経由で北千里へ、帰りはその逆のルートをたどる。淡路駅で乗り換えるための地下通路がそれだ。(たまには梅田発以外に天六発の北千里行きがあるがそれに乗る場合は別)疑う方は一度試されるとよい。電車の線路が交差していることによる。なーんだ、改札口とホーム間の連絡通路か、などと馬鹿にしてはいけない。道と通路とはほぼ同義語である。したがって命題は偽となる。童謡に「今来たこの道帰りゃんせ」というのがあるが、帰らない道もあるのだ。
ところで、「if」文の多いアルゴリズムで抜け落ちのないようにするには、こうした思い違いが致命傷となる場合も多い。こうした抜け落ちを見つける方法は命題の「証明」が一番確かとなる。隠れていた暗黙の前提条件がボロボロ浮かびあがるからだ。もっとも数学的表現にするのが一苦労であるが。
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