 
      - 大阪大学名誉教授 建築工学
酒場で女性がハンフリー・ボガードに「夕べどこにいたの?」と聞くと「そんな昔は憶えちゃいない」、「今夜会ってくれる?」と聞くと「そんな先のことは分からない」とつれなく答える。映画「カサブランカ」の一場面だ。そのキザな言葉を一度は言ってみたかったが機会がないまま今日に至っている。
ところで、記憶する素材が1963年に発見された。
それはShape Memory Alloyと呼ばれるものであり、直訳の「形状記憶合金」又は簡単に「SMA」とも呼ばれる。
23年前にこのSMAを核融合炉の接合部品に使ってはどうかという話が私に持ち込まれた。核融合では中性子による炉壁の損傷が激しい。そこで考えられたのが炉体そのものをカセットのように簡便に取替える方式である。
取替えの際に配管の着脱が必要となるが、当時は既に2方向メモリーも開発済みであり、短くきられたパイプの径が開いたときと閉じたときの形状を記憶させ、それを接続部品(カップラー)として使おうというわけだ。
ボルト接合にすると高度なロボットが必要となるが、これなら温度の制御だけで遠隔操作ができる(図1参照)。
![[図1] カセット式核融合炉](jhadbo0000004mwt-img/vol11_f01L.gif) 
核融合時に発生する中性子により、どの程度記憶が薄れるか、も問題だが、それは原研での実験で確かめることとなり、私がシミュレーションによるディテールの検討を担当した。
解析には接触問題が扱えるNIKE2Dをベースとした。相遷移温度の応力依存性については実験結果があったので、それを踏まえたうえで、新たにSMAの構成則をつくり解析を行った[1],[2]。
NIKE2Dはプログラムのサブルーチンが直列型につながっていく特異なものだったので構成則の組み込みには苦労した覚えがある。
現在、核融合開発は一国の手には負えなくなり、ITER計画として欧米日露中印などの共同で開発をしている。設置場所は日本とフランスで争い、南仏のカラダッシュに落ち着いた。そこならニースやモナコに近いし休日はのんびりと・・・で決まったと思うのはうがち過ぎ?
- E.Tachibana et al "Finite Element Analysis of Tubular Connection Sealed with O-Ring and Shape Memory Alloy's Coupler", Proceedings of the International Conference on Computational Engineering,1988,pp.59v1-59v4, Atlanta,GA,USA (Springer-Verlag)
- N.Nishikawa, E.Tachibana et al,"Quick Replacement of the Fusion Core Parts in a Cassette Compact Toroid Reactor", Fusion Engineering and Design, 5, 1988, pp.401-413, (Elsevier Science)
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