【中級編】シミュレーション活用ナレッジ

周波数応答解析機能のご紹介

2011.08.02
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LS-DYNA971 R5.0から周波数応答解析FRF(Frequency Response Function)が追加されました。構造物の振動制御を行なう際の重要な評価指標となる振動伝達特性(伝達関数)を周波数応答解析により求めることができます(図1)。加振点に負荷された定常正弦波荷重に対して振幅や位相が変化した振動が応答出力点で観測されます。周波数応答解析は、入出力信号の振幅比と位相差の周波数に対する変化を調べることになります。

図1 構造物振動伝達特性(伝達関数)
図1 構造物振動伝達特性(伝達関数)

解析事例1:片持ち梁周波数応答解析

片持ち梁の周波数応答解析を行い、固有値解析および理論解から得られた固有周波数と比較しました(図2)。周波数0~400Hzの加振力を負荷し、応答出力点を設定します。伝達関数を表すボード線図(位相線図とゲイン線図)は、解析結果として出力されるfrf_angleとfrf_amplitudeの2つのアスキーファイルにより、Arup software T/HISやLS-PREPOSTによりグラフ化することができます。加速度応答を設定した場合、ゲイン線図(frf_amplitude)にはアクセレランス(=出力加速度/入力荷重)が出力されます。

図2.片持ち梁周波数応答解析および固有値解析
図2.片持ち梁周波数応答解析および固有値解析

解析事例2:シートフレーム周波数応答解析

構造物の伝達関数を求める実機試験としてハンマー打撃試験がしばしば実施されます。自動車シートのハンマー打撃試験を行う場合、シートフレームを紐で吊るした状態で支持し、車体からの振動入力点となるシートマウントブラケットに対してハンマーを打撃します。ハンマー打撃により擬似的なホワイトノイズが入力されます。

周波数応答解析によりハンマー打撃試験を再現することができます(図3)。非拘束状態にしたシートフレームモデルに対してハンマー打撃点に加振力を負荷し、シートバックおよびシートパンに応答出力点を設定します。速度応答を設定した場合、ゲイン線図(frf_amplitude)にはモビリティ(=出力速度/入力荷重)が出力されます。ゲイン線図からは20Hzで卓越する周波数が発生していますが、固有値解析の結果を見るとハンマー打撃方向(Y方向)に20Hzの固有振動モードが発生していることがわかりました。

図3 シートフレーム周波数応答解析(ハンマー打撃試験)
図3 シートフレーム周波数応答解析(ハンマー打撃試験)

まとめ

通常の周波数応答解析FRF(Frequency Response Function)では周波数に依存しない単位加振力と位相の入力となり、ハンマー打撃試験などのホワイトノイズ入力になります。一方、複雑な振動スペクトルを持つ加振入力も可能であり、周波数応答解析の拡張機能として実装された定常動的応答解析SSD(Steady-State Dynamic Response)をオプションに追加して使用します。SSDにより周波数に依存した加振力と位相(または加振力の実部と虚部)を入力することが可能になり、例えば自動車の場合はエンジンアイドリング振動や走行中のロードノイズなど、試験で計測された振動特性を入力することができます。SSDの解析結果として応答出力点の変位(disp_[x/y/z])、速度(vel_[x/y/z])、加速度(accel_[x/y/z])、加速度の実部・虚部(d3ssd)、加速度の値・位相(d3ssdm)の周波数応答を表すアスキーファイルが出力されます。

LS-DYNAの周波数応答解析は今後も機能拡張が計画されています。特定の周波数におけるモデルの応力出力や、荷重加振以外の入力(速度、変位)の追加などが予定されています。さらに、より高度な機能追加やユーザーの利便性に対応するために新しいキーワード*FREQUENCY_DOMAIN_FRF、*FREQUENCY_DOMAIN_SSDの追加も報告されています。

参考文献
  1. Yun Huang, Bor-Tsuen Wang: Mode-based Frequency Response Function and Steady State Dynamics in LS-DYNA, 11th International LS-DYNA Users Conference, 2010
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