近年では、コンピュータ性能の向上やCAE技術の進化を背景に、材料の変形挙動だけでなく破断の予測も含めた高精度なCAEモデルが求められるようになってきています。一方で、材料モデルの高度化に伴い、いかに効率的かつ高精度に材料パラメータを求めるのかが課題になっています。まず、破断の予測には応力三軸度に依存する複雑かつ高精度な材料近似モデルが要求されるため、応力三軸度が異なる複数の試験を行う必要があります。特に樹脂材料では応力三軸度だけでなくひずみ速度によっても材料挙動が大きく変化するため、高精度な動的試験が不可欠となります。また、試験結果から材料パラメータを取得および同定する作業も必要です。
JSOLでは、この困難な材料同定をより簡便かつ高精度に行える、材料パラメータ同定ソリューションの提供を開始しました。試験結果をもとに、材料近似モデルとリバースエンジニアリングを用いて材料パラメータを半自動的に同定できます。本記事では、JSOLの材料パラメータ同定ソリューションである、材料パラメータ同定ソフトウェア VALIMAT® 、ペンデュラム試験装置 IMPETUS®、材料同定サービスの概要を紹介します。
材料同定ソフトウェア VALIMAT®
DVALIMAT®は、材料試験の情報をインポートし、リバースエンジニアリングにより材料パラメータを同定するソフトウェアです。VALIMAT®のワークフローを図1に示します。
後述のIMPETUS®または外部試験装置により取得された試験データを取り込み、データベースとして管理します。フィッティング可能な材料モデルが豊富に実装されており、たとえばLS-DYNAのMAT_024はもちろん、MAT_187(SAMP-1)や MAT_ADD_EROSION(GISSMO、DIEM)などの高度な材料・破壊モデルを選択可能です。試験装置に対応する解析モデルを自動生成または読み込んでリバースエンジニアリングを実施し、試験結果と解析結果が合うように半自動的にパラメータフィッティングを行います。
卓上型動的試験装置 IMPETUS®
IMPETUS®は、動的なひずみ速度および異なる応力三軸度に対して効率的かつ高精度に樹脂材料を試験可能な、卓上型のペンデュラム試験装置です。(図2) 図3に示されるように、IMPETUS®では、試験片の治具の部分を変更することで、動的な曲げ、引張曲げ、圧縮、パンクチャー(2軸引張)および引張の5種類の試験を実施可能です。
IMPETUS®はVALIMAT®との親和性が高く、IMPETUS®で実施した試験結果からVALIMAT®を用いた材料カードの作成まで非常に簡便に行うことができます。下記より、VALIMAT®とIMPETUS®を利用した、試験実施から材料カード生成の流れを動画でご確認いただけます(提供:VALIMAT®とIMPETUS®開発元4a engineering社)。
材料同定サービス
VALIMAT® およびIMPETUS® の開発元であるオーストリアの4a engineering社に材料を送付して、試験を行い、材料パラメータを同定するサービスです。JSOLでは、以下の表に示すとおり等方性樹脂材料および繊維強化樹脂材料の材料同定サービスのご依頼を承っています。
本材料同定ソリューションの導入検討や、材料同定サービスの詳細などのご要望は、こちらからお問い合わせください。
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4a engineering社は、プラスチックエンジニアンリングと材料科学を専門に研究開発を進めるオーストリアの企業です。
特に動的な材料特性の同定技術に強みをもつ樹脂材料や複合材料のエキスパート企業として、動的試験装置(IMPETUS®)や材料パラメータ同定のソフトウェア(VALIMAT®)を開発しています。
4a engineering
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