- 大阪大学名誉教授 建築工学
次に結果の一部を紹介する。
図2は地震応答解析結果(水平荷重)のアニメーションを見ながら途中でストップさせたもの。ただし、変形は50倍に拡大している。
図3はその一部を拡大し、コンクリート部分を画像から消したもの。梁の付け根あたりの鉄筋の軸力変動をみるため、その部分をクリックして軸力変動図を得ている。黒っぽく汚れて見えるのは、クリックするたびに書かれた要素番号が重なって見えている。
図4は、柱・梁部分をまとめて縦方向にスパッと切って主応力の流れを見たものである。水平荷重に対し、主応力の流れは接合部付近でその向きを変え、コンクリートを介して応力の伝達がなされている。
図5は、水平荷重でなく柱脚部に上下衝撃加重を与えた場合のvon Mises(フォン・ミーゼス)相当応力[1]を示したものである。実際のアニメーションでは赤い部分が上に向かって伝播していく様子がわかるのだが・・。
以上のことは「地球シミュレーター」を使わなくてもある程度は知っている。しかし、上下衝撃荷重では床の中央部で大きく増幅するとか、水平加重では杭に生じる応力は、外側に並んだ杭と内側に配置された杭とでは応力分布が異なるとかいった多くの新たなことも分かった。
そして何よりも「建物全体の鉄筋の一本一本までモデル化し、さらにそれだけでなく杭も地盤も併せてモデル化して解析する」といった素朴な目的のための突破口を開けることができたのは「地球シミュレーター」のお陰だと思う。
おっとーお陰といえば大切なことを言い忘れている。本解析は、当時大学院生であった水島靖典君によりなされたものである。また当時「地球シミュレーター」のセンター長だった佐藤哲也先生(この4月から、兵庫県立大学シミュレーション学研究科・科長)をはじめGASSTプロジェクトに参加された多くの方々の寛容とご協力のお陰であることを申しそえる。
- このvon Mises相当応力は正の実数値なのでカラーで表現する際によく用いられる。ちなみに、鋼などでは、この値があるレベルを超えると塑性変形がはじまる、とのvon Misesの説がよく合うとされている。それは金属結晶が剪断方向に比較的すなおに転位(dislocation)が進展していく場合であるとも言える。
- Y.Mizushima, N.Ichinose and E.Tachibana, "Large-scale simulations of the dynamic behavior of rein-forced concrete buildings", Proceedings of Int. Sym. on Structures under Earthquake, Impact and Blast Loadings (IB'08), pp.135-142 (2008).
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