MD-GANによる長時間分子運動予測
機械学習とシミュレーション技術を連携した「MD-GAN」(慶應義塾大学・泰岡研究室が開発)を使うことで、短時間の分子シミュレーション結果から長時間の分子の動きを予測することができます。これにより、時間のかかる計算をせずに、分子の拡散など長時間の変化を効率よく調べることができるようになりました。
解析・利用例のポイント
- 短時間のMD計算結果から機械学習で長時間の分子の運動を予測
- 分子の拡散性の評価に有効
- 分子運動のサロゲートモデルとして活用
短時間のMD計算結果から機械学習で長時間の分子の運動を予測&拡散現象を評価
MD-GANを用いて短時間の分子運動データから長時間の分子運動を予測した結果を示しています。従来の分子動力学(MD)計算では長時間の挙動を扱うには膨大な計算時間が必要ですが、MD-GANを用いることで短時間のデータから長時間の挙動を高精度に予測することが可能になります。これにより、拡散現象などの長時間スケールの物理現象を効率的に評価できます。

MD-GANによって長時間の分子運動を予測
分子の拡散性の評価に有効
水の平均二乗変位(MSD)を示したグラフです。黒点線がMD計算結果、赤実線がMD-GANによる予測結果を表しています。緑色の短時間領域のデータを学習に用い、白色の長時間領域においても予測結果がMD計算とよく一致していることが確認できます。これにより、MD-GANの高い予測精度が実証されています。

MD-GANによって予測されたMSD
参考文献
- K. Endo, K. Tomobe, and K. Yasuoka, In Thirty-Second AAAI Conference on Artificial Intelligence, pp. 2192-2199, (2018)
https://ojs.aaai.org/index.php/AAAI/article/view/11863/11722 - 川田ら, “MD-GAN を用いたポリエチレンの拡散予測”, 第35回分子シミュレーション討論会, (2021)
- 山田ら, “MD-GANを使用した固体電解質内のリチウムイオンの拡散係数予測”, 第34回分子シミュレーション討論会, (2020)
- 湯原ら, “機械学習による分子動力学シミュレーションの時間発展新手法を用いた各種物理量予測”, 第32回分子シミュレーション討論会, (2018)
解析内容の詳細