MD-GANによる固体電池内のLiイオン拡散解析
固体電池材料におけるリチウムイオンの拡散挙動を、第一原理分子動力学(AIMD)と深層生成モデル(MD-GAN)を組み合わせて解析しています。AIMDは高精度ながら計算コストが高いという課題がありますが、MD-GANを用いることで短時間のデータから長時間の拡散挙動を予測可能にしています。本事例では、LiZr₂(PO₄)₃を対象に、MD-GANがAIMDと同等の拡散傾向を再現できることを確認しています。この手法により、固体電池材料の評価を効率的かつ高精度に行うことができます。
解析・利用例のポイント
- 第一原理MDデータを入力とした深層生成モデルによる長時間データの生成
- 時系列データの学習が可能
- 長時間のふるまいを高精度に予測
第一原理MDデータを入力とした深層生成モデルによる長時間データの生成
AIMDで得られたLiイオンの拡散軌跡を示しています。Liイオンが結晶内をランダムに移動している様子が可視化されており、拡散経路の特徴を把握することができます。

固体内のリチウムイオンの軌跡(AIMDによる)
時系列データの学習が可能
MD-GANの構造と学習プロセスの概要を示しています。MDデータから特徴量を抽出し、step skipやレコード数を調整して時系列データを学習・生成します。

MD-GANの概要
長時間のふるまいを高精度に予測
MDとMD-GANで得られたLiイオンのz座標変位を比較したものです。両者ともにランダムウォーク的な挙動を示しており、MD-GANの再現性の高さが確認できます。

Liイオンのz座標変位(MD vs MD-GAN)
参考文献
- Endo, K. et al., Proceedings of the AAAI Conference on Artificial Intelligence, 32, 2192 (2018).
- Kawada, R. et al., Journal of Chemical Information and Modeling, 63, 76-86(2022).
- Kawada, R. et al., Soft Matter, 18, 8446-8455(2022).
- Soler, J. M. et al., J. Phys. Condens. Matter, 14, 2745 (2002).
解析内容の詳細