人の体を対象とするヘルスケア製品や医療器具の製品開発においては、人体構造や人体に与える影響を正しく把握し分析することが重要です。しかしながら、生体を対象とする実験は容易ではありません。そのため、デジタルデータを基に行うシミュレーション、つまりコンピューター上での仮想試験が有効になります。
本記事では、JSOLが長年培ってきた製造業分野でのシミュレーション実績を基に、医療分野で求められる高度な解析を実現する事例をご紹介します。
解説付きの動画形式でも無償公開しておりますので、メカニズム分析や試作レスでの設計開発の検討にお役に立てください。
医療分野で活きるリバースエンジニアリング
コンピューター上で仮想試験を行うためには、シミュレーションに使用するデジタルデータが必要になります。製造業の分野では、製品の設計や製造に用いるCADデータを使って、計算に必要な形状をメッシュという形で用意します。しかし、医療分野では、仮想試験の対象となる人体のCADデータはありません。そこで、CTやMRIで撮影した人体の3次元画像データから、人体の3次元の寸法データを生成するリバースエンジニアリングの活用が注目されています。
CT画像を例にすると、骨などは内臓や皮膚に比べて白く映ります。このとき、組織の色の差から決めた閾値を使って骨だけのデータを取り出します。さらに、シミュレーションに必要なCADデータの構築やメッシュデータ作成を行います。
Simpleware Softwareは、複雑な人体内の画像データから必要な部位だけを抽出したり、モデリングしたりする作業を容易にするソフトウェアです。各種事例や便利な使い方を動画にて公開しています。ご視聴をご希望の方は こちら のページよりお申し込みください。
人体内での構造応答評価とマルチフィジックスシミュレーション
ステントやカテーテルといった柔軟構造の医療器具は、人体の内部組織と複雑な相互作用が発生する状態で使用されます。しかも、医療器具自体が大きく変形しているうえに解析上は接触している状態となるため、シミュレーションでの再現においては強い非線形性をともないます。
さらに、人体内をシミュレーションする際には、構造的な変形や応力の評価だけでなく、熱や流体、電磁場といったマルチフィジクスを同時に解きたい場面が多くあります。たとえば、心臓のトータルシミュレーションです。心臓の膜電位を構造解析に連成させて心臓の挙動を解き、さらに心臓内の血流循環を流体解析機能によってモデル化することで、不整脈治療のデバイスや人工弁の開発に役立てることができます。
Ansys LS-DYNAは、これらの強い非線形性のある現象においてもマルチフィジックスで同時に解くことができるソフトウェアです。
その他にも、インプラントの強度や注射針の穿刺、人体モデルを用いた転倒解析などさまざまな医療系シミュレーション事例を動画にて公開しています。ご視聴をご希望の方は こちら のページよりお申し込みください。
今回ご紹介しました動画が皆様の業務のご参考になりましたら幸いです。
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