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LS-DYNAによる超合金Zの物性評価

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: 技術情報
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LS-DYNA

WEB コンテンツ「前田建設ファンタジー営業部」と映画『ファンタジー営業部』とのコラボ企画にJSOL が CAE 技術で応えた、マジンガーZのバーチャル実験シリーズ第3弾をお届けします。

前田建設ファンタジー営業部とは?

前田建設ファンタジー営業部は、アニメ、漫画、ゲームといった空想世界に存在する、特徴ある建造物を本当に受注し、現状の技術および材料で建設するとしたらどうなるかを分析して連載するWEBコンテンツです。過去には「マジンガーZ」の格納庫を題材に、実際に作るとしたら72億円の費用がかかるといった見積もりをし、詳細を書き出した書籍も出版するなど、長らく「マジンガーZ」の世界を独自の視点で解析してきました。
引用元:前田建設ファンタジー営業部

今回は、CAEブログ『マジンガーZ の「バーチャル実験」〜LS-DYNA による格納庫の衝撃・安全解析と超合金Zの物性評価〜』で取り上げた、超合金Zの物性評価事例をご紹介いたします。

(C)前田建設/Team F (C)ダイナミック企画・東映アニメーション

©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

検討手順

通常FEM解析に使用する材料物性値は、引張試験などの材料試験や、規格値、文献などからの引用が多いかと思います。今回対象とした超合金ZはマジンガーZの作中に出てくる架空の合金であり、材料物性値に関する情報はもちろん現実には存在しません。そこで、下記の方針により検討を進めました。

・超合金Zの物性値について、世の中で一般的に使われている鋼材の強度をベースとする
・鋼板へのロケットパンチの衝突解析を実施する
・ベースの強度から徐々に強度を増していき、ロケットパンチの威力としてふさわしい結果=塑性変形がほとんど発生しない結果が得られたものを超合金Zの物性値とする
・最後に、未知の怪獣への衝突解析を実施して、その威力を確認する
上記方針をフローチャートで示すと図1のようになります。

図1 フローチャート 図1 フローチャート

マジンガーZの腕と鋼板のモデル化

ロケットパンチは、マジンガーZの絵から起こした3DのCADデータをもとにメッシュ作成を行いました。今回は、右腕の前腕部分をモデル化対象としています。作成したメッシュモデルを図2に示します。

図2 ロケットパンチの絵(C)前田建設/Team F (C)ダイナミック企画・東映アニメーション 図2 ロケットパンチの絵
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

衝突対象となる鋼板の大きさは6m×6m、厚さは30cmとしました。作成した鋼板のモデルを図3に示します。

鋼板モデルの絵 図3 鋼板モデルの絵 図3

超合金Zのベースとする鋼材には、一般に使用頻度の高いSS400を用いました。SS400の特性はJIS規格から引用しています。
境界条件については、鋼板の四辺を完全拘束とし、ロケットパンチにはマッハ2の強制速度定義を行いました。

鋼板への衝突解析結果

ロケットパンチの鋼板への衝突解析結果を図4〜6に示します。ロケットパンチの剛性がSS400相当の場合、ロケットパンチ自体が大きく変形していることが分かります。剛性を100倍にした場合は、ロケットパンチはほぼ変形しておりませんが、親指の部分がわずかに塑性変形していることが確認されました。最終的に剛性を10000倍としたケースでは、見事ロケットパンチの塑性変形もなく、鋼板を打ち抜く結果が得られました。

図4 鋼板衝突解析結果:ロケットパンチ自体が変形(NG)(C)前田建設/Team F (C)ダイナミック企画・東映アニメーション

図4 鋼板衝突解析結果:ロケットパンチ自体が変形(NG)
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

衝突対象となる鋼板の大きさは6m×6m、厚さは30cmとしました。作成した鋼板のモデルを図3に示します。

図5 鋼板衝突解析結果:突き指発生(NG)(C)前田建設/Team F (C)ダイナミック企画・東映アニメーション

図5 鋼板衝突解析結果:突き指発生(NG)
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

図6 鋼板衝突解析結果:ロケットパンチに変形なし、板を貫通(OK)(C)前田建設/Team F (C)ダイナミック企画・東映アニメーション

図6 鋼板衝突解析結果:ロケットパンチに変形なし、板を貫通(OK)
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

未知の怪獣への衝突解析結果

ロケットパンチの威力を確認するために、未知の怪獣にロケットパンチを衝突させる解析を実施しました。未知の怪獣はJSOL社員のお子様が描いた絵から起こした3Dのデータをもとにモデル化しました。解析結果を図7に示します。解析結果から、未知の怪獣も鋼板同様に難なく貫通できることが確認できました。

図7 未知の怪獣「クーハイヤン」衝突解析結果(C)前田建設/Team F (C)ダイナミック企画・東映アニメーション

図7 未知の怪獣「クーハイヤン」衝突解析結果
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

まとめ

このプロジェクトでは前田建設ファンタジー営業部様とのコラボにより、架空の合金である超合金Zの物性をシミュレーションによるアプローチで解明することを試みました。

結果として、超合金Zは一般的な鋼材であるSS400の10000倍の剛性を有するという現実には有り得ない結論となりました。こういった物性値もシミュレーションでは表現可能であり、シミュレーションならではの検討によりコラボが上手くいったと考えられます。

8カ月に渡りお届けしてまいりました「マジンガーZのバーチャル実験」シリーズは今回でひと区切りです。これからもJSOLは豊富な経験と知見を生かしながら、新たな挑戦を続けてまいります。

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