第一原理電子状態計算ソフトウェア

ASAP

第一原理電子状態計算ソフトウェア

ASAP

ASAPの機能

ASAP(Atomistic Simulation Advanced Platform:エイサップ)は、スペインのSIMUNE社が開発した電子状態解析のための統合型プラットフォームです。材料開発の現場で活用されており、シミュレーションの専門家はもちろん、初めての方でも直感的に操作できる設計が特長です。密度汎関数理論(Density Functional Theory : DFT)を用いた第一原理計算のソルバー(エンジン)として「Quantum ESPRESSO(平面波基底)」と「SIESTA(局在基底)」を選択でき、対象に応じた柔軟な解析が可能です。ユーザーは画面上のボタンに従って操作するだけで、必要な解析手順をスムーズに進めることができます。

機能のポイント
  • 材料物性予測のための使いやすいGUI
  • 目的に応じたソルバーの選択
  • J-OCTAとの連携

材料物性予測のための使いやすいGUI

ASAPでは、さまざまな物性を評価するために、物性ごとに専用の解析プロジェクトを作成して実施します。これにより、直感的な操作で迷わずにモデリングを行うことができます。

プロダクトラインナップ:ASAP Pro / ASAP Pro Transport / ASAP HTEP
ASAP Pro:固体/分子の各種物性解析
ASAP Pro Transport:ASAP Proの全機能に加えて、バリスティックな電気伝導解析
ASAP HTEP:ハイスループットのためのASAP Pro簡易版

初心者でも使いやすいGUI

ワークフローに表示される「モデリング → 条件設定 → 解析実行 → 結果評価」の順に操作するだけで、初心者でも迷わず電子状態解析を進められます。ワークフローは解析メニューから目的に応じて簡単に選択でき、ユーザーフレンドリーなGUI設計により直感的な操作が可能です。
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1点計算・構造最適化機能

与えられた原子/分子配置の状態密度、分子のHOMO/LUMO、フェルミエネルギー、固体結晶のエネルギーバンドを求めます。構造最適化では、基底状態における力が指定された閾値よりも小さくなるように構造が決定されます。ASAP Pro、ASAP Pro Transport、ASAP HTEP に含まれます。
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フォノン・振動計算機能

フォノン解析では、得られた分散曲線から固体中における振動や熱の伝わりやすさの目安を与えます。またJ-OCTAとの連携機能により、定積モル比熱が得られます。振動計算ではFT-IRなどの実験に対応した分子振動の結果を得ることできます。ASAP Pro、ASAP Pro Transport に含まれます。
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状態方程式・反応解析機能

状態方程式を用いることで、格子サイズをパラメータとした時の平衡体積、平衡エネルギー、体積弾性率を求めます。反応解析では反応経路とそれに対応する活性化エネルギーを算出します。ASAP Pro、ASAP Pro Transport に含まれます。
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界面エネルギー・相互作用計算機能

界面エネルギー解析では、スラブと吸着分子間のポテンシャルエネルギーを計算します。結果をMoorse型のポテンシャルとして出力することも可能です。相互作用計算では、スラブと吸着分子間の相互作用エネルギーを計算します。ASAP Pro、ASAP Pro Transport に含まれます。
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第一原理MD・光学応答機能

第一原理MDでは、DFTに基づいて原子にかかる力を評価し、結晶や分子のダイナミクスを計算します。現象や対象物性に適したアンサンブル(NVE/NVT/NPT:系の体積や圧力などを制御する方法)が選択可能です。光学計算では、エネルギーに対する半導体/絶縁体/分子の誘電率の実部と虚部、屈折率と消衰係数を計算します。ASAP Pro、ASAP Pro Transport に含まれます。
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電気伝導計算機能

電気伝導(電子輸送)計算では、散乱のないバリスティック伝導を扱うことができます。電子の透過率、電気伝導率、スピン流の解析が可能です。ASAP Pro Transport に含まれます。

参考:マルチスケールシミュレーションから見た電気伝導
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目的に応じたソルバーの選択

解析目的に応じて3種類のソルバーを組み合わせて使用できます。
・Quantum ESPRESSO (QE):バルク・周期系に最適。チューニングパラメータが少なく初心者向けのソルバー
・SIESTA:分子、界面などの非周期系、規模の大きな対象を解析するためのソルバー
・TranSIESTA:電子輸送解析のためのソルバー

SIESTA

SIESTAは、局在基底を用いた第一原理計算ソルバーです。局所的な基底関数により使用メモリが少なく、計算効率に優れ、大規模系や界面、低次元材料の解析に適しています。さらに、TranSIESTAとの連携により電子輸送特性の解析にも強みを発揮し、材料分野だけではなくライフサイエンス分野も含めて、様々な現象の解析に適用されており、豊富な文献実績を持つソルバーです。
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Quantum ESPRESSO

Quantum ESPRESSO(QE)は、平面波基底と擬ポテンシャルを用いた第一原理計算ソルバーで、周期系のモデルに適しています。局在基底に比べて基底関数の取り扱いがシンプルで、精度と計算安定性のバランスに優れています。電子状態、バンド構造、フォノン、材料物性など多様な物理量を高精度に計算可能で、理論・実験の両分野から広く支持されています。豊富な論文実績に支えられた信頼性の高いソルバーです。

ソルバーを組み合わせた効果的な使い方

QEで規模の小さな周期系の結晶を解析し、その結果を再現するように必要に応じて SIESTA側でパラメータチューニングしたモデルを利用して、界面などを含む大規模なモデルを解析することができます。
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J-OCTAとの連携

ASAP とJ-OCTAを連携することで、電子状態を考慮したマルチスケールシミュレーション環境が構築できます。ASAPの結果をJ-OCTAの分子動力学エンジンのパラメータとして活用したり、構造をやり取りし、J-OCTAの豊富な解析機能を利用した物性値の評価や結果の可視化が可能です。さらに、J-OCTAに含まれるマテリアルズ・インフォマティクスのためのデータをASAPで用意するといった使い方も可能です。
参考:材料設計に分子シミュレーションを用いる際に知っておいてほしいこと

ASAPの結果を利用したJ-OCTAによるMD計算

ASAPの解析結果をJ-OCTAに活用することで、高精度な分子動力学(MD)計算が可能となります。
・ASAPで得られた界面エネルギーをもとに、J-OCTAのMD計算に適した高精度なLJポテンシャルパラメータを推定
・ASAPで得られた電子分布から、MD計算に必要な各原子の点電荷を導出
・ASAPで取得したエネルギーや力のデータを、機械学習力場の教師データとして利用(J-OCTA側で研究開発中)
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ASAPの解析結果をJ-OCTA上で評価

ASAPの解析結果を J-OCTA に読み込ませることで、様々な解析(結果の評価)が可能です。
・ASAPを用いたフォノン計算の結果を用いて、分子/結晶の温度-モル比熱を評価
・ASAPを用いた第一原理MD計算の結果をJ-OCTAで読み込み、描画や解析を実施
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J-OCTAで得られたMDの結果をASAPに渡してDFT計算

J-OCTAで得られたMDの結果をASAPに渡してDFT計算を実施できます。長時間の緩和計算をMDあるいはその上のスケールのモデルで実施した後、得られた(部分)構造をASAPに渡し、DFT計算により電子状態を評価ことなどが可能です。例えば有機薄膜太陽電池やOLEDのような有機半導体デバイスの特性への応用が考えられます。
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マテリアル・インフォマティクスとの連携

ASAPで得られた物性値データを、J-OCTAのマテリアルズ・インフォマティクス機能であるMI-Suiteの教師データとして利用することも可能です。
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豊富な先行研究・サポート・コンサルティングサービス

豊富な先行研究

QuantumESPRESSOとSIESTA、それぞれについて多くの先行研究があり、すぐに物性評価のためのシミュレーションに着手することができます。
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サポートとコンサルティングサービス

サポート契約により、JSOLの専属スタッフが導入初期の支援やメール対応を行い、基礎理論から操作までを扱う各種セミナーも提供しています。ASAPを活用した材料の物性予測、メカニズム解析に関するコンサルティングも実施しており、事例調査からモデル構築、計算、解析、報告まで一括対応します。さらに、開発元のSIMUNE社には第一原理計算のプロフェッショナルが在籍しており、高度なサポートも可能です。お気軽にご相談ください。
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