機械学習ポテンシャルを用いた格子熱伝導率計算
半導体材料における熱伝導率を、機械学習ポテンシャルを用いたフォノン解析により評価しました。シリコンのダイヤモンド構造を対象に、フォノン分散関係や熱伝導率の温度依存性を実験値と比較し、良好な一致を確認しました。さらに、周波数に対する累積熱伝導率を解析し、低周波数のフォノンが熱輸送に寄与することを示しました。
解析・利用例のポイント
- フォノン解析による熱伝導率評価
- 機械学習ポテンシャルの活用
- 累積熱伝導率の周波数依存性分析
シリコン結晶モデル
計算に使用したモデルは、3×3×3スーパーセル(216原子)のシリコン結晶です。このモデルに対して、機械学習ポテンシャルを用いたフォノン解析を実施し、原子間力定数の推定と熱伝導率の評価を行いました。フォノン分散関係や状態密度の計算により、実験値との一致を確認し、モデルの妥当性を示しています。

計算で用いたシリコン3×3×3のスーパーセル
フォノン分散と状態密度
フォノン分散関係は実験値と良い一致を示し、状態密度の計算結果も妥当性を確認できました。左側にフォノン分散関係の実験値との比較、右側に計算されたフォノン状態密度が示されていて、解析の精度と信頼性が高いことがわかります。機械学習ポテンシャルを用いたフォノン解析が有効であることが示されました。

フォノン分散関係と状態密度
熱伝導率と累積寄与
熱伝導率の温度依存性と、平均自由行程およびフォノン周波数に対する累積熱伝導率を示しています。左に熱伝導率の実験値との比較、中に平均自由行程に関する累積熱伝導率、右にフォノン周波数に関する累積熱伝導率が表示されています。これらの解析により、低周波数のフォノンが熱輸送に大きく寄与していることが明らかとなりました。

熱伝導率と累積熱伝導率
参考文献
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