リバースマッピングによるアモルファス構造の作成
高分子アモルファス構造の効率的な作成手法として、リバースマッピング技術を用いた方法が紹介されています。従来の方法では希薄状態からの圧縮と平衡化が必要でしたが、本手法では粗視化モデルを用いて指定密度と特性比に基づく構造を短時間で作成し、全原子モデルへ変換することで、ポリマーの絡み合いや構造特性を再現できます。ポリエチレンやポリスチレンなど複数のポリマーで検証され、構造の妥当性と効率性が確認されました。
解析・利用例のポイント
- 長鎖ポリマーモデルの緩和構造を効率的に作成
- 高分子の特徴的構造パラメータを考慮
- 従来法と比較してより理想的な構造を作成可能
長鎖ポリマーモデルの緩和構造を効率的に作成
通常版とリバースマップ版のアモルファス構造作成フローを比較したものです。通常版は希薄状態からの圧縮を伴う一方、リバースマップ版は粗視化モデルを用いて効率的に平衡化を行い、全原子モデルへ変換します。

アモルファス作成機能の処理フロー(左:通常版、右:リバースマップ版)
高分子の特徴的構造パラメータを考慮
ポリエチレン(PE)、ポリブタジエン(PB)、ポリスチレン(PS)の3種ポリマーについて、密度と回転半径(Rg)を比較した結果です。密度は両手法で同程度ですが、Rgは重合度が大きくなるほど差が顕著になります。

アモルファス作成機能で作成されたポリマーモデル3水準の密度と慣性半径
従来法と比較してより理想的な構造を作成可能
PB、PE、PSのモデルにおける平均二乗末端間距離の重合度依存性を示しています。リバースマップ版では、理論的な比例関係に近い傾向が得られ、構造の妥当性が確認されました。

作成されたPB、PE、PSモデルの重合度依存性の比較
参考文献
- L. J. Fetters, D. J. Lohse, and R. H. Colby, Physical properties of polymers handbook , 445?452 (2006).
- H. Nitta, T. Ozawa and K. Yasuoka, J. Chem. Phys., 159, 194903 (2023).
解析内容の詳細
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