「充放電時の発熱特性を予測する解析モデルの開発」をテーマにお届けしている「ゼロから始めるバッテリーシミュレーション」の第2回です。本稿では、第1回でご紹介したHPPC試験で得られた充電率ごとの電圧履歴から等価回路パラメータを同定し、バッテリー解析モデルを構築します。
バッテリー形状モデル
図7はバッテリー形状のモデル化です。左図が外側のケース、中央がケース内部の捲回体です。捲回体の左右には電極がついています。右図は捲回体の本体で、オレンジとグリーンが集電体となっており、電極に挟まれています。捲回形状のバッテリーは、負極および正極、セパレータを重ねて巻いて作成されています。
等価回路モデル(Randles回路)
続いて、バッテリーの特性を表す等価回路モデルを作成します。等価回路モデルとは、モデル化する現象の特性を最小限の要素で表現し、動作の相似関係を持たせるように作成された回路です。Liイオンの移動による電圧の変化を、電流と電圧の関係として表現しています。
図8に、Randles回路の概略図を示します。電流源から流れた電流が、RC並列回路、抵抗R0、開放電圧uを通ることで、アノードとカソードの電位差を計算しております。図9は放電から30秒後に電流を流したときのイメージ図です。第1回でご紹介したHPPC試験の電圧履歴で見られた開放電圧、電圧の降下、時間経過による電圧の変化をこれらのU, R0, R10, C10のパラメータを用いて表します。
等価回路パラメータはそれぞれ以下のような現象をあらわしています。
- R0:電流印加した瞬間の電圧降下量
- R10:電流印加中の電圧降下量
- C10:電流印加中の電圧降下の傾向
- U:電流印加前の電圧(=開放電圧OCV)
(左)図10. 1C放電区間の電圧履歴[SOC : 100%]、(右)図11. 充電率ごとのRandles回路より得られた1C放電区間の電圧履歴[SOC : 100-10%]
熱特性と熱境界条件
熱特性はバッテリーセルの正/負極板、正/負極活性物質、セパレータといったすべてのパーツに与える必要があります。主要なパラメータは、質量密度、比熱、熱伝導率です。今回は捲回体をマクロにモデル化したため、層の厚さと熱特性からマクロな特性を算出し、セルの積層方向をZとして熱伝導率を定義しました(表1)。
|
質量 密度 |
比熱 | 熱伝導率X, Y, Z (W/m・K) | |||
| (kgf/m3) | (J/kg・K) | X | Y | Z | |
| マクロ特性 | 1958.2 | 889.5 | 24.84 | 24.84 | 0.95337 |
その他熱境界として、ケース表面からの周囲に逃げる熱量として熱伝達境界を定義します。また、ケースと捲回体の間に熱接触境界を定義することで、接触における伝熱を考慮しました。(図12)
電気境界条件
実験(第1回を参照)と同様に、1C CC放電の電流を負極から正極へ電流を印加します。今回は電極の抵抗加熱も考慮するため、上から出ているタブから電流を印加します。初期温度は24℃とし、アノードとカソードそれぞれに電気伝導率(表4)を定義します。
(左)図13. 放電時の電流方向、(右)図14. 放電時の電流、電圧履歴(実験)
| Condition | Condition |
| Running current[A] | 28.0(1C放電) |
| Temperature[℃] | 24.0 |
| Materials | Materials |
| Conductivity anode[S/m] | 6.0E+07 |
| Conductivity cathode[S/m] | 3.8E+07 |
| Cell capacity[Ah] | 28.0 |
| Initial SOC[%] | 100.0 |
「ゼロから始めるバッテリーシミュレーション」第2回は、寸法測定データに基づきバッテリー形状モデルを構築し、HPPC試験データから同定した等価回路パラメータに基づいて電気特性の定義、さらに、試験条件から熱および電気境界条件を付与したシミュレーションモデルの構築を行いました。次回は、構築したモデルを使った1C放電シミュレーション結果と実験結果を比較し、解析結果の検証を行います。
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