【上級編】シミュレーション活用ナレッジ

ゼロからはじめるバッテリーシミュレーション ~車載状態を模擬した解析~ 第6回

2023.08.10
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「充放電時の発熱特性を予測する解析モデルの開発」をテーマにお届けしている「ゼロからはじめるバッテリーシミュレーション」の第6回です。本稿では、第5回で構築した解析モデルを基に、実運用下における内部の各層の厚みの変化による機械的なストレスを検証し、必要な拘束力を予測します。

車載状態を模擬した解析モデル

近年、電機・精密機器の梱包材として従来用いられてきた発泡スチロールなどに代わり、CO2排出量がより少なく環境負荷が小さい段ボールや図1に示すようなパルプモールドの利用が広がっています。特に、積載性、頑強性、利便性などの多機能・多性能を兼ね備えたエコロジカルな梱包材の設計にはAnsys LS-DYNAを用いた梱包落下シミュレーションが有効です。

図1:車載状態を模擬するする解析モデル
図1:車載状態を模擬するする解析モデル

図2:充放電と熱による膨張予測モデル(第5回の再掲載)
図2:充放電と熱による膨張予測モデル(第5回の再掲載)

充放電と熱による膨張解析結果

拘束なしでは中央が膨らんでいるのに対し、側面を拘束しているため、拘束ありではほとんど変形していません。
図3の右側のコンター図は厚さ方向のひずみ量として、濃いピンクが膨張、青が収縮している結果です。内部の断面を見ると、拘束なしでは負極合材層が膨らんでいるのが分かります。
一方で、拘束ありではセパレータが収縮していることが、一番右のセパレータのみを表示したコンター図からわかります。これは側面を拘束したことで最も剛性が低いセパレータが収縮してエネルギーバランスを保った結果と考えられます。

図3:拘束有無によるセルの膨張および内部の各層の厚みの変化
図3:拘束有無によるセルの膨張および内部の各層の厚みの変化

膨張による変形量を数値化した図4のグラフからも、拘束なしではセパレータはほとんど収縮していませんでしたが、拘束ありでは大きく収縮していることがわかります。
なお、完全拘束させたときの腹方向の反力は1.347kNとなっており、必要な拘束力も予測することができます。

図4:各層の膨張量グラフ
図4:各層の膨張量グラフ

まとめ

ゼロからはじめるバッテリーシミュレーション第6回は、第5回で構築した解析モデルを基に、実運用下における内部の各層の厚みの変化による機械的なストレスを検証し、以下を紹介しました。

  • 第5回で構築した解析モデルを基に、車載状態を模擬した解析モデルの作成
  • 拘束有り無しでの変形量の変化と完全拘束に必要な拘束力の予測
バッテリーシミュレーションにご興味がございましたら、弊社担当営業もしくは、こちらまでお問い合わせください。

参考文献
  1. F. Badin et al., Modelling of On-board Energy Storage System ageing. The French SIMSTOCK research network, EVS 24, The International Battery, Hybrid and Fuel Cell Electric Vehicle Symposium & Exhibition, Stavanger (Norway), May 2009.
  2. V. V. Viswanathan et al., "Effect of entropy change of lithium intercalation in cathodes and anodes on Li-ion battery thermal management", Journal of Power Sources 195 (2010) 3720-3729
  3. LIVERMORE SOFTWARE TECHNOLOGY (LST), AN ANSYS COMPANY, “LS-DYNA® KEYWORD USER'S MANUAL VOLUME II Material Models”, LS-DYNA R13, 09/27/21
  4. 天野 慎一ら,「車載用リチウムイオン電池の発熱挙動解析とそのシミュレーションによるモデル化の検討」, 第62回電池討論会(2021)
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