光学特性評価
全原子分子動力学(Full-Atomistic MD)を用いて、ポリスチレンおよびポリカーボネートのアモルファス構造に対して一軸伸張計算を行い、分子配向により生じる複屈折を評価しました。ポリマーに含まれるベンゼン環の配向方向により、正負それぞれの複屈折が生じることを確認しました。プラスチックレンズ、光学フィルムなどの光学材料の設計に活用することができます。
解析・利用例のポイント
- 分子配向による複屈折を解析
- ベンゼン環配向と屈折率の関係を評価
- ブレンドによる複屈折低減など材料設計への活用
ポリスチレンの伸長計算結果
伸長計算の結果、ベンゼン環が伸張方向に垂直に配向するポリスチレン(PS)の構造を示します。ベンゼン環は動きやすいπ電子を含むため、環平面方向の屈折率が高く、環平面に垂直な方向の屈折率は小さくなると考えられています。そのため、ベンゼン環平面が延伸方向に垂直になるポリスチレンでは負の配向複屈折を示すと考えられます。

ポリスチレンの伸長計算結果
ポリカーボネートの伸長計算結果
ベンゼン環平面が伸張方向に平行に配向するポリカーボネート(PC)の構造を示します。環平面方向の屈折率が高くなるため、正の複屈折が生じると考えられます。

ポリカーボネートの伸長計算結果
配向複屈折の比較
J-OCTAのシナリオ機能を用いて複屈折を評価しました。MDの計算結果から、すべての共有結合のベクトルを得ることができます。それに対して結合分極率データベースを用いて、システム全体でのX・Y・Z各方向の屈折率を評価します。PC、PS、PMMA、PC/PSブレンド系の配向複屈折を比較しました。PCは正、PSは負、PMMAはほぼゼロ、ブレンド系は複屈折が低減される傾向を示しました。

配向複屈折の比較
参考文献
- 宮崎, 東川, 増渕, 成形加工'05, Ⅳ-312, pp267-268, (2005)
- 岩清水,大久保,小沢,君塚, 成形加工シンポジア'06,C-201,pp107-108,(2006)
解析内容の詳細