JWELDの機能
簡単な操作で、溶接変形/残留応力を高精度に予測
JWELDは2つの生産技術「溶融溶接」「摩擦攪拌接合(FSW)」 を対象としたパッケージ群からなるソフトウェアです。
現場の設計者向けに開発されたGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)は、直感的な操作性で特別なトレーニングを必要としません。
溶融溶接解析(熱弾塑性法):Welding Designer
JWELD Welding Designerは、アーク溶接やレーザー溶接などの溶融溶接を対象とした解析機能です。
溶接部への入熱や溶接ビードの生成を逐次計算する熱弾塑性解析手法を用いることで、溶融池近傍の詳細な温度履歴が取得できます。
また、溶接熱変形だけでなく溶接部周辺の残留応力分布も予測できます。標準機能である相変態ソルバーを組み合わせることで、溶接熱履歴によるHAZ(熱影響部)の組織変化を予測でき、ハイテン材や工具鋼など細かい成分調整が必要な鋼材の溶接影響も事前評価できます。
-
- 残留応力の予測
- 溶接後の残留変形を評価することで、溶接時の割れや耐久性への影響を事前に把握します。また、相変態を考慮することで継手の強度低下予測も可能です。
-
- 溶接変形の予測
- 分散メモリ型並列計算(DMP: Distributed Memory Parallel)機能により、製品サイズの熱弾塑性計算による変形を予測します。
-
- 多様な熱源モデル
- 溶接変形を予測するうえで重要な溶け込み形状を、高精度に再現するため、さまざまな分布関数による入熱モデルを利用できます。
溶融溶接解析:Welding MEGA
Welding MEGAは、大規模構造物や薄板構造物などの大規模な溶融溶接に適した解析機能です。
大阪大学接合科学研究所で開発された固有ひずみ解析ソルバー「JWRIAN」をベースにJSOLが共同開発した「JWELD lhsm」ソルバーを内蔵しており、溶接時の変形を数分で予測できます。
Shell要素と呼ばれる薄板を対象とした計算手法を用いており、計算時間が数分と短いのが特長です。船体パネル・プラント・タンクなどの大規模構造物や、自動車・建機フレームなどの薄板構造物の計算に適しています。
また、熱変形の低減や歩留まりの改善を可能にする溶接順序の検討を、最適計算機能によりサポートします。ロボットのティーチング情報から溶接工程を自動作成し、最適化ソルバーを用いた溶接順序の変更による変形の低減検討をWelding MEGAが行います。
-
- 固有ひずみデータベース
- 固有ひずみデータベースは、テストピース変形からの同定機能や溶接条件・継手形式による予測機能により、固有ひずみデータを簡単に追加することができます。
-
- ティーチング情報の取り込み
- 溶接ロボットのティーチングファイルを読み込むことで、継手の位置と溶接順序を自動的に設定します。
対応ロボット:クラネンドンク Rinas Weld、川崎重工業 KCONG、パナソニック DTPSV
-
- 溶接順序の最適化
- 溶接順序の変更を自動的に行い、数百ケースの結果の中から溶接変形を低減する順序を自動的に決定します。
溶融溶接解析:Welding Scheduler
Welding Schedulerは、鋳造および鍛造製品の変形予測に適した解析機能です。
Welding Designerによる熱弾塑性解析の残留ひずみ結果を用いる固有ひずみ法の熱変形解析ソフトウェアで、Welding MEGAとは異なる Solid要素 と呼ばれる肉厚製品を対象とした計算要素を用います。
熱弾塑性計算用の部分モデル作成や残留ひずみ結果の引き継ぎは、Welding Scheduler用GUIにより簡単に設定が行え、固有ひずみ法の特徴である計算の速さを生かした溶接順序の検討を行うことができます。
-
- 残留ひずみの簡単な引継ぎ
- Welding Designerで計算した試験体モデルの溶接後の残留ひずみを、長さや方向の異なる製品モデルの溶接線に簡単にマッピングして全体の変形を予測することができます。
摩擦攪拌接合解析:Friction Stir Welding (FSW)
JWELD FSW (Friction Stir Welding)は、摩擦攪拌接合を対象とした解析機能です。
ツール周りの攪拌現象を計算する機能とツール周辺の発熱量を用いた接合変形を計算する機能の2つの計算機能により構成されています。
ツールの回転速度および接合速度だけで、ツール周りの攪拌状態から接合性および発熱量を予測できます。予測した発熱量から熱変形や残留応力の予測ができる摩擦攪拌接合の完全なシミュレーターです。FSWの課題である、内部欠陥の抑制・入熱状態の評価・ツール反力の低減などへの活用が期待できます。
-
- 完全なシミュレーター
- 接合条件から発熱量を計算し、予測した発熱量を入力して熱変形計算を行います。ツール周辺の挙動だけでなく、FSW接合における製品変形や残留応力の評価も可能です。
-
- ツール周りの材料攪拌の予測
- ツール周りの塑性流動計算を行うことで、発生する応力や温度分布の予測が可能になります。内部の状態を把握することで、接合条件の最適化に役立てることができます。
スポット溶接組立解析:Spot Welding
Spot Weldingは、抵抗スポット溶接の組立工程を対象とした解析機能です。
JSOL独自のスポット溶接向け固有ひずみ解析※を利用することで、スポット溶接を含む組立工程の変形を短時間で予測できます。
Welding MEGAと同様のShell要素による薄板を対象とした計算手法を用いており、計算時間が短いことが特徴です。組立工程の変形を予測することで、組立後形状の事前評価や、各工程での変形履歴の確認および工程改善検討を行えます。
スポット溶接専用のGUIが、打点の自動生成、クランプなどの工程定義や工程管理といった解析設定をサポートします。
※特許取得済み(特許第6985689号)
Spot Welding 操作動画
溶接継手のき裂進展解析:Strength
Strength は、溶接継手のき裂進展を解析する機能です。
溶接継手に初期欠陥と残留応力分布がある場合に、き裂が荷重によってどのように進展するかを解析します。
き裂進展解析は、従来手法では予めき裂箇所を前提としたメッシュ分割を行ったり、メッシュを細かくするなどの準備が必要でした。JWELDではX-FEMを用いることで、メッシュ分割と独立したき裂を表現でき、き裂の進展を精度良く効率的に解析できます。
また、溶接継手におけるき裂の進展は残留応力の影響を大きく受けるため、残留応力分布を精度良く計算することが求められます。Strength は、Welding Designerで解析した残留応力の結果を引継ぐことができるため、高精度なき裂進展解析が実現できます。
-
- X-FEMによるき裂進展解析
- 圧力容器のような、き裂が致命的な問題になる構造物に対して、き裂が進展していく様子を解析できます。
き裂の進展方向は、従来手法のようにメッシュ分割に依存することなく求められます。
動作環境
OS | Windows 10 Pro、Enterprise(64bit) |
---|---|
CPU | Intel Xeonプロセッサ推奨 |
メモリ | 必須:16GB、推奨:64GB |
ハードディスク | インストール:1.4GB、実行時:解析内容による |
ディスプレイ解像度 | 1280×960以上 |
グラフィックカード | OpenGL Ver.3.2以上対応 VRAM 1GB以上推奨 |
- ※記載されている製品およびサービスの名称は、それぞれの所有者の商標または登録商標です。