Solution 自動車衝突安全のバーチャル認証
開発プロセスに起きる変化と課題への対応
リアルワールドでの安全を目指したバーチャル認証の広がり
昨今、Euroプロジェクト IMVITER 最終報告書(2012)で示された実機試験とバーチャル認証におけるバランスが変わる変曲点が訪れています。それに伴い、近い将来リアルワールドセーフティーに向けて VT 導入が加速すると考えられています。
主要なアセスメント機関では、10年前の IMVITER プロジェクトを起点として着実に Virtual Testing(以降VT) 実現に向けた活動が続いています。具体例として、これまでも安全性アセスメントを牽引してきた EuroNCAP が 2026年に開始する前突・側突VT を皮切りに、3年ごとに要求項目やレベルを上げることを打ち出しています。また、C-NCAP も独自色を出すために EuroNCAP にはない要求項目を打ち出しており、自動車会社各社は双方に対応するため、車種開発環境・体制の整備を急いでいます。
リアルワールドでの安全に向け、シミュレーションだからこそ実現可能な要求(複数ロードケースにおける多面的な安全性評価、人体有限要素モデルを用いた傷害リスク評価)が求められ、開発コストの増加が懸念されます。この状況に対応するには、これらの要求爆発をマネージするタフな開発体制構築が必要となります。
開発プロセスで起こる変化と課題に向けたVT対応開発支援
JSOLでは、自動車衝突安全バーチャル認証で今後求められる要求の中でも重要なポイントになる
- ・CAEモデルの精度評価
- ・ロバスト設計
- ・人体傷害値の安全基準評価
- ・CAE結果の原産地証明
に対応したソリューションをご紹介いたします。
- CAEモデルの精度評価
- 実験に対するCAEの「精度」の定義が厳密になる事に伴い、真の意味でのバリデーションが求められます。
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- ロバスト設計支援
- 製品の性能評価が点から面へ変わること、CAE結果を提出後に試験を行う必要があることから、製品の「ロバスト性」が重要となります。
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- 人体傷害値の安全基準評価
- 今後、検定をパスした証明付きダミー以外使えなくなり、人体モデルによる傷害リスク評価の重要性が高まります。
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- CAE結果の原産地証明
- CAEの役割が実験を成功させるための補助ツールから評価の対象に変わる事により、CAE結果の原産地証明が求められます。
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可視化・判断のアシストを行う開発支援ツールによるCAEモデルの精度評価
これまで最終評価値である傷害値等スカラー値の誤差で評価されていた「精度」が今後、複数のセンサーシグナルに対して途中経過も含めた精度で評価されます(ISO18571)。また、EuroNCAP Far-side では 2024年から 2025年のモニタリング期間で ISOレーティング 0.5以上を超えないと実機試験の点数が半減するペナルティーがあり、真の意味でのバリデーションが求められます。
高い水準を求められるCAEモデルの評価値ですが、可視化・判断をアシストする ARUP Software の ISO評価ツールが誤差の要因特定をサポートします。このツールを用いることで、様々な条件における実験と CAEの比較やジョブ投入のシステムとインテグレートができるため、エンジニアが誤差の要因特定を行う際のアシスタントツールとして活用することで、CAEモデルがクリアすべき精度で製品開発を進めることができます。
統計処理を用いた「ばらつき」可視化ツールによるロバスト設計支援
これまで自動車の安全性は「厳密に定義されたある1つの衝突条件」で定義されていました。今後は「複数の衝突条件すべて」で定義され、衝突性能や乗員保護性能の「ロバスト性」が重要となります。また、EuroNCAP Far-Side の VT評価プロトコルでは、まず様々な条件でのシミュレーション結果をすべて提出し、計算妥当性がチェックされた後に試験を行う必要があります。その条件下で CAE の精度が評価されるため、製品そのものがロバストではない場合、試験の通過が困難になることが予想されます。
このような状況で問題を解決するのが DIFFCRASHです。DIFFCRASH は統計処理を用いたロバスト設計支援ツールで、モンテカルロ計算や実験計画法などで複数回行った計算を統計処理でモードに分解し、構造が持つ「ばらつきやすさの度合い」や「ばらつきやすさのクセ」を可視化できます。また、入力ばらつきを大きくすることで設計空間探査にも応用できるため、どのような挙動が起こりえるかを直感的に把握できます。
人体傷害値評価ツールによる人体傷害値の安全基準評価
人体傷害値の安全基準は、これまで世界共通で「アメリカ人男性/女性の標準体型の乗員ダミーのセンサー出力(加速度、力)に基づく傷害値が基準以下」という定義でした。今後は、各アセスメントで FEダミーモデルによる VT が広がり、実際に起きる損傷の発生確率で評価されるようになります。
JSOLでは、その基準を満たすことができる人体モデル評価支援Webアプリケーション JSOL IRV(Injury Risk Visualization)を開発、提供しています。このアプリを用いることで、人体 FEモデルの要素情報から傷害リスクを計算できます。また、乗員安全解析プリポストプロセッサー ARUP software PRIMER と連携して人体 FEモデルを自在にポジショニングすることも可能です。マルチステージの複雑なポジショニングにも対応しています。
シミュレーションデータマネジメントシステムによるCAE結果の原産地証明
プロトコルでは、実機試験を行う前にモデルをフリーズしたうえで複数条件の計算結果を提出します。また、VTロードケースにおいて定められた条件以外は変えないことが求められ、CAEにおいて今後、原産地証明(トレーサビリティー)に対する責任が求められていくことが想定されます。
CAEデータと開発プロジェクトの管理を行うシミュレーションデータマネジメントシステムである SCALE.sdm は、作成したデータをシステムに登録することで、最終提出物に繋がるすべての情報を紐付け、トレースを可能にします。また、開発途中の計算データを蓄積することで、対策によって起きた結果(変化)から「気づき」を得ることができるようになり、手戻りを最小化します。
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