Solution EV/HEVのためのCAE
EV/HEV開発を支えるCAEソリューション
環境規制の強化とEV/HEV化の流れ
近年、米国におけるZEV(Zero Emission Vehicle)規制や中国におけるNEV(New Energy Vehicle)規制の強化など、環境に配慮したクルマ作りが世界的に求められています。そのような背景の中、EV(電気自動車)/HEV(ハイブリッド電気自動車)化が国内でも急速に広がっています。
EV/HEVの開発には、高性能・高品質なバッテリーの開発が欠かせません。そのためには、電極や触媒などにおける分子レベルの現象理解からバッテリーそのものの安全性の確保、電動化による電磁波が人体に及ぼす影響の検討まで、従来以上に幅広い検討が求められます。
また、樹脂複合材料等の軽量素材への置換による車両軽量化の取り組み以外にも、ここ数年はアルミ鋳造で一体化した骨格構造を製作してクルマ作りのプロセスそのものを変えていく動きも顕著であり、トータルコストを抑えるための技術が競争力のあるEV/HEVの開発には求められています。
EV/HEV化に伴う新工法や新構造を評価するシミュレーションソフト
バッテリーの電極・触媒などの分子レベルでの現象を理解するためには、分子シミュレーションソフトウェア(J-OCTA、SIESTA)が適しています。また、バッテリーの実構造からは、Synopsys社のSimpleware Softwareを用いたリバースエンジニアリングにより詳細なFEM用の解析モデルを構築することができ、様々なシミュレーションにご活用いただけます。
バッテリー内部で発生しうる短絡現象は、電磁界、流体、熱伝導など複雑な物理現象が絡み合って起こります。Ansys LS-DYNAには、従来の衝突シミュレーションに加え、これらの物理現象を連成して解く機能が搭載されており、バッテリーの安全性評価にご利用いただけます。LINOVISは保安基準が厳しいバッテリーセルの釘刺し試験に対応するコンパクトな計測装置で、高速度試験にも対応しています。
また、バッテリーのワイヤレス充電時には、電磁界が人体に及ぼす影響を評価する必要があります。EMCoS Studioでは、このような人体への影響も考慮した評価が可能です。
JSOLでは、EV/HEV化に伴う新しい技術課題に対して、様々なソリューションをご提案しています。
バッテリー用新材料の設計
EV/HEV化には、高性能なバッテリーが欠かせません。その中でも、蓄電量が多く放充電を繰り返しても劣化しにくいリチウムイオン電池の登場により、電気自動車の開発がますます加速しています。リチウムイオン電池の開発を効率よく行うためには、実証実験のみならず、CAEを用いたメカニズム解析およびCAE上での課題解決が不可欠です。特にリチウムイオン電池の電極付近に対する現象に理解はバッテリー開発の要となります。
JSOLでは、電極表面での反応や電極と電解液の反応を分子レベルで評価することができるシミュレーションソフトウェアや、実際の電極の測定画像を用いて詳細にモデル化ためのソフトウェアをご提供しています。JSOLのソフトウェアを、バッテリー用新材料の開発にお役立てください。
全固体電池内のLiイオン拡散シミュレーション
電極周辺のメカニズム解析や材料設計のためには、ミクロスケールでのシミュレーション技術が有効です。
J-OCTAおよびSIESTAを用いることで電極表面での反応、電解液の拡散やイオン電導、電極電位計算、電位安定性、電極構造の生成プロセスと物質輸送などの現象にアプローチすることが可能です。
また、MD-GANなど機械学習を利用することで計算コストを大幅に削減し、効率的な材料開発が可能になります。
電極構造生成プロセスシミュレーション
電池の性能向上のためには電極構造生成プロセスの評価も重要です。J-OCTAの粒子法ソルバーVSOP-PSでは、電極形成工程のシミュレーションが可能です。粒子の種類や含有率、成形条件が構造に与える影響を考察したり、さらに生成された構造の評価(空隙率など)を行ったりすることで最適な電極構造成形プロセスの検討が可能です。
リチウムイオン電池・電極の現物モデリングと分析
蓄電デバイスが注目される今、リチウムイオン電池の研究開発がますます加速しています。
実際の電極の測定画像を用いた詳細なモデル化は、充放電特性のシミュレーションなどに生かすことができ、また電極特性に影響を与える活物質の分析にも応用が可能です。
電池設計の上で重要となる実際の形状を使った評価にSimpleware ソフトウェアをご活用ください。
バッテリーの性能評価
自動車を開発するうえで、衝突安全性能は重要な評価指標の一つとなっています。バッテリーを搭載したEV/HEVにおいても、既存の構造の自動車と同等の安全性能が求められます。一方で、携帯電話やパソコンなどで使われているバッテリーで発火事故が相次ぐなど、バッテリー自体の安全性の向上は喫緊の重要な課題です。このようなバッテリーの安全性を評価するためには、発火に直結する内部短絡や外部短絡といった電磁気学、熱力学、化学反応など様々な物理過程を含む現象の理解が必要不可欠です。
JSOLでは、このような複雑な物理現象を同時に計算することができるソフトウェアだけでなく、自社内で釘刺し試験などの厳重な保安基準を求められる設備をコンパクトな試験装置として実現したハードウェアもご用意しています。バッテリーの安全性能向上のためにJSOLのプロダクトをご活用ください。
Ansys LS-DYNAによるバッテリー解析機能
将来的にEV・HEV用バッテリーの生産拡大が見込まれる中、性能や安全性に関連した規格や法規制が整いつつあり、シミュレーションのニーズが高まっています。
例えば、バッテリーが外力により変形し内部短絡が生じる現象に対し、Ansys LS-DYNAでは、バッテリーや内部短絡を電気回路でモデル化した電場解析と、熱構造連成解析を連成させることにより、変形や温度分布から、安全性の評価を行うことができます。
また、バッテリーの冷却管を流れる流体をモデル化した流体解析とも連成することで、冷却性能を評価することも可能です。
このような高度なマルチフィジックス解析にも、Ansys LS-DYNAがご活用いただけます。
セル充放電時の膨張予測
JSOLではバッテリーシミュレーション技術の構築のみならず、実機と比較することでに予測精度の確認も実施しています。一例として外部機関と連携し、車載用LIBを恒温槽内で充放電後の変形量を計測し、構築したモデルとセル中心部分の膨張量を比較したところ、良く一致した結果が得られています。詳細は以下の連載記事で解説しており、是非こちらをご一読下さい。
バッテリーセル圧壊測定用の試験装置 LINOVIS
各国の安全基準にて電池に対する熱暴走リスクを評価するための釘刺し試験が規定されています。これらの試験は非常に厳しい保安基準を求められるため、自社内で設備を導入する場合の投資が大きくなってしまいます。4a engineering社が手掛ける試験装置のLINOVISは非常にコンパクトかつ頑健で、保安基準を満たしつつ、高速度試験やDIC測定など多彩なデータの取得が可能です。
新構造に対応した車両性能評価
世界的に強化されつつある排ガス規制をクリアするためには車両構造の軽量化は引き続き重要な技術課題の一つとなっています。EV/HEV化が普及した世の中においても、車両構造の樹脂化による軽量化はますます進んでいくことが予想されます。
JSOLの樹脂複合材ソリューションは、各部材に使われる樹脂複合材の成形工程から衝突解析のような車両全体の解析までカバーしており、車両性能評価に適用いただけます。近年ではアルミ鋳物によって車体骨格を一体成型する技術も登場していますが、肉厚なためにソリッド要素でのモデリングや鋳物特有の材料特性を表現する必要があり、解析技術のアップデートが求められています。
一方、EV/HEV化に伴い、ワイヤレス充電などの新しいプラットフォームの登場が予想されます。ワイヤレス充電により、自動車の内部には電磁界が発生しそれが人体へ影響を及ぼすことが知られています。
JSOLの電磁界解析ソリューションでは、車両全体をモデル化することで電磁界が人体へ影響を及ぼす影響を解析することができます。
今後のEV/HEV開発にJSOLの樹脂複合材ソリューション、電磁界解析ソリューションをご活用ください。
樹脂複合材の解析ソリューション
軽量化のキーマテリアルとして繊維強化複合材料(FRP)が注目されている一方、複合材は非常に複雑な材料挙動を示すため、成形性能・構造性能をCAEにて予測することが大変困難な材料でもあります。JSOLでは、各種成形解析、成形工程の影響を考慮した構造解析(プロセス連携解析)、衝突解析などの解析技術の開発に力を入れて取り組んでおります。複合材を用いた製品開発の際には、JSOLの複合材解析ソリューションをご活用ください。
リダクションモデリングによる高速化ソリューション
製品開発では手戻り防止のためには設計フェーズの前半で性能評価を行うフロントローディングが重要になります。J-SimRapidが作成する大変形・衝突解析に対応したビーム要素によるリダクションモデルは、設計フェーズ前半での製品の衝撃強度を評価するフロントローディングを可能にして、開発コスト削減に寄与します。
アルミによる大規模車体構造を想定した解析技術
アルミ鋳造にて数十部品のアセンブリを1部品で成形する技術が登場し、注目されています。反面、造形は複雑で板厚も従来の高強度鋼板に比べて数倍厚い箇所もあり、シェル要素でのモデリングが困難です。そこでJSOLではソリッド要素によるモデリング技術や、不均一なアルミ鋳造品の材料特性を模擬する解析技術の構築を進めています。
低周波磁界による人体曝露の解析
EVの利便性を大幅に高めるバッテリーのワイヤレス充電システム。その実用化にあたっては、充電時に生じる電磁界が人体防護ガイドラインの推奨値以下であることを確認する必要があります。
EMCoS Studioは、精密な人体ボクセルモデルの電磁界解析で体内電界分布を推定、クルマ・充電装置の設計初期段階におけるガイドライン適合性評価を実現します。
関連プロダクト
- ※記載されている製品およびサービスの名称は、それぞれの所有者の商標または登録商標です。