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AIを活用した材料設計(J-OCTA)

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:技術情報 / 機能紹介
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J-OCTA

材料設計シミュレーションソフトウェア「J-OCTA(ジェイ・オクタ)」に実装された、AI(機械学習)を活用した材料設計ソリューションを紹介します。

マテリアルズ・インフォマティクスとは

マテリアルズ・インフォマティクス(Materials Informatics(MI))は、機械学習を含む情報処理技術を活用した効率のよい材料開発の取り組みを意味します。MIの活用により、たとえば「○○の機能を満たす材料を開発したい」という目的に対して、既存の材料の構造・組成と材料物性の関係を学習し、最適な材料の構造・組成を効率的に求められます。そのほかにも、実験条件の最適化や、大量にある複雑な実験データの解析(可視化)など、人間だけでは得られなかった新たな知見を得ることができる可能性があり、注目されている技術です。

図1 マテリアルズ・インフォマティクスの概要図1 マテリアルズ・インフォマティクスの概要

2011年に米国で開始されたMaterials Genome Initiative(MGI)が始まりであると言われています。世界中で同じようなプロジェクトが立ち上げられており、日本でも2015年の国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)による「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ(MI2I)」(2020年3月に終了)や2016年の国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超プロジェクト)」をはじめとした数多くのプロジェクトが開始されました。この超超プロジェクトにはJ-OCTAの基盤となる「OCTA」システムがプラットフォームの一つとして採用されています。JSOLでは、NTTデータ様が販売するAI・機械学習のためのプラットフォーム「DataRobot」とJ-OCTAを活用したMIの提案も始めています。

J-OCTAとMI

J-OCTAは、機械学習を活用して材料設計を行うための機能を備えています。代表的な機能として、機械学習に必要な大量のデータの自動生成を行える機能と、機械学習を利用して材料物性予測を行える機能をご紹介します。

学習データの自動生成

機械学習、特に深層学習を行うためにはまず数多くのデータが必要になります。しかし、既存の実験データですべての試験条件が揃っていることは稀です。さまざまな材料の試験を自分たちで行うには莫大なコストがかかるため、適切なデータを十分に収集するのは容易ではありません。

そこで、多様な材料に対して網羅的にシミュレーションを行い大量のデータを生成する「ハイスループット計算」と呼ばれる技術でこの課題を克服しようとする取り組みがあります。J-OCTAには、そのハイスループット計算を行うための機能(MDモデリングAPI)が備わっています。通常の手順では、GUI上から材料ごとに一つ一つ手作業で、立体的な構造の情報を含めた分子構造モデルを作成し、計算手法や条件の設定を行う必要があります。MDモデリングAPI機能ではコマンドやpythonスクリプトから、英数字で文字化された化学構造を元にJ-OCTAで計算可能な分子構造モデル形式に変換し、計算条件が設定されたインプットファイルの生成、計算実行を自動的に行うことができます。これにより、GUIを立ち上げることなく多数の計算を効率よく実施することができるようになります。

図2 シミュレーションの自動実行による機械学習向け物性データ作成機能図2 シミュレーションの自動実行による機械学習向け物性データ作成機能

材料物性の予測

機械学習を用いて材料物性予測を行うための基本的な機能は、「機械学習QSPR」機能としてJ-OCTAに実装されています。機械学習を利用して材料開発を行うには、まずは学習した材料の特徴を計算に適した形に置き換える必要があります。化合物名から分子構造の特徴を抽出することは難しく、また、化学の教科書でよく見るような構造式の表記ではプログラム内で処理することができません。そのため、ASCIIの英数字で表記する必要がありますが、膨大な量のデータを人の手で適切な形に整えることは困難です。この課題を解決するため、J-OCTAには外部のデータベースを検索しその表記方法を取得する機能が備わっています。

つぎに材料の分子構造と材料特性の関連を学習し、任意の分子構造の物性値を予測しますが、学習方法には材料分野以外でも使用されるグラフ畳み込みネットワークを採用しています。

図3 機械学習QSPR図3 機械学習QSPR

学習データから分子構造と物性値の関係を学習し近似関数を得る回帰問題に加え、データの分類の傾向から属性のラベル分けを行う分類問題にも対応しています。これまでに密度やガラス転位温度、特性比、分子軌道(HOMO/LUMO)など物質や分子の基本的な特徴を表す値の学習を行った事例があります。

図4 学習結果(ガラス転位温度)【縦軸:予測値、横軸:実験値】図4 学習結果(ガラス転位温度)【縦軸:予測値、横軸:実験値】

J-OCTAにおけるAI活用の展望

今後は、材料開発により役立つ情報の取得のため、学習データから物性に影響を与える共通の化学構造を見つける機能やデータ数が少ない場合にも精度よく学習を行えるようにするための機能、より多くの高分子材料への対応などさまざまな機能の追加が予定されています。また、最新の技術として、与えた物性値を実現するための化学構造・物質を逆算する機能の開発も進んでいます。

今回ご紹介した技術について、ご興味のある方はこちらからお問い合わせください。

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