[活用事例] Simpleware Softwareによる天然植物繊維の形態観察 - 繊維モデル
- 分野
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- 工業分野
- 構成
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- Simpleware Elite
- 解析ソフト
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- ANSYS
ケナフ繊維の形態観察、有限要素法(FEM) 応力解析を実施
木粉よりもアスペクト比を大きく取ることのできる天然植物繊維を充填したFRP複合材料は、いわゆるグリーンコンポジットのなかでも特に強度・剛性といった機械的特性向上への期待が持たれています。
本事例は、千葉工業大学工学部機械サイエンス学科鈴木教授の研究室にて、マイクロフォーカスX線CTで天然植物繊維(ケナフ繊維)を撮影し、繊維の形態観察、有限要素法(FEM)応力解析を実施された事例です。モデル化だけでなくSynopsys社のSimplewareソフトウェアのプラグイン機能が、1068枚のスライス断面の繊維横断面積の多点計測に活用されました。この研究により、繊維破断の起点となりうる箇所について検討が行われ、天然繊維の妥当な繊維強度モデルを構築するための足がかりを作られました。(データ:千葉工業大学工学部機械サイエンス学科鈴木先生ご提供)
マイクロフォーカスX線CT撮影
マイクロフォーカスX線CTでは、X線源の焦点寸法が5μmほどであり、SOD(線源から撮像対象までの距離)を極力小さくし、SID(線源から検出器までの距離)との比と大きく取ることで、CTの拡大率を高めることができ、サブミクロンの空間分解能も可能となります。実際のCT撮像にあたっては、SODをできるだけ小さくするためにケナフ靭皮繊維を十数本直径1mm程度に束ねテープで縦置きで固定し撮像対象を準備されました。
今回のケナフ繊維は、XY断面画像の画素数1024×1024の8bitグレースケールビットマップ1068枚の連続スライス画像スタックとして出力され、視野サイズはX、Y方向ともに1.151mm、Z方向に1.200mmであり、空間解像度はX、Y、Zいずれの方向も1.124μm/pixelです。
再構成された画像のXY断面の一例
Simpleware ScanIPによるモデル化
ScanIPにCTのスタック画像を読み込みます。
ケナフ繊維束より1本ずつ計8本の繊維を取り出すプロセスは、以下のようになります。
1. グレースケールのしきい値で繊維を抽出
2. Floodfill機能で連結領域として繊維1本1本のマスク(ボクセル集合)を抽出
3. 平滑化とノイズ除去のためGaussianフィルタ処理
その後、ケナフ繊維毎に1068枚あるスライス断面の繊維横断面積をScanIPのプラグイン・スクリプトで自動測定、測定結果(Z座標値[mm]と横断面積[mm2])はCSVファイルに出力され、それをMicrosoft Excelに読み込み、横断面積Aの繊維内変動をグラフ化されました。
引張負荷下におけるFEM応力解析結果
SimplewareソフトウェアのFE Moduleで、ケナフ繊維のマスク(ボクセル集合体)から有限要素法(FEM)メッシュを生成します。均質等方性材料特性(ヤング率55GPa、ポアソン比0.3)を割り当て、4面体ソリッド要素にてメッシュ分割します。繊維8本の平均として、要素総数96万、節点総数20万でした。
解析条件は、上下端部断面を面内完全拘束した上で1000με相当の強制変位を与え、線形弾性解析を実施し、繊維の変形および応力分布を得ました。
いずれの繊維も繊維としての真直性が低いことから、単純引張下にあっても局所的に曲げもしくはねじりが生じたことによる応力集中が発生していることがわかります。
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