[活用事例] Simpleware SoftwareとLS-DYNAの連携による強度解析 - 人工膝関節モデル
- 分野
-
- 医工連携
- 構成
-
- Simpleware Elite
- 解析ソフト
-
- LS-DYNA
人工膝関節ポリエチレンインサートの形状設計における破壊強度基準を検証
本事例は北里大学大学院医療系研究科で人工膝関節ポリエチレンインサートの形状設計における破壊強度基準を検証した事例です。
市販されているPS(Posterior Stabilized)型人工膝関節「製品A(小型フラット)」「製品B(小型カーブ)」「製品C(大型フラット)」の3機種を用意、過伸展によるポスト前方面の衝突と深屈曲によるポスト後方面の衝突を模擬し、ポスト表面の圧力、ポスト内部に発生するミーゼス相当応力とせん断ひずみを求め強度設計の基準を調査されています。(データ:北里大学大学院医療系研究科 医用生体工学 田中先生ご提供)
Simpleware Softwareによるモデル化と解析条件
モデル化手順
- 人工関節をCT撮影し、そのDICOMデータをScanIPでインポートしモデル化。
- 大腿骨コンポーネントとポリエチレンインサートそれぞれをSTLに変換。
- STLをCAD Moduleで読み込み屈曲角度の調整。次にScanIPデータに出力後、+FEでメッシュを生成。
製品A(小型フラット)の衝突を模擬
- ● 大腿骨コンポーネントは荷重方向のみ移動
- ● ポリエチレンインサートは完全拘束
- 過伸展によるポスト前方面の衝突を模擬
・屈曲角度 -10°
・適用荷重 500, 1000 N
- 深屈曲によるポスト後方面の衝突を模擬
・屈曲角度 120°
・屈曲角度 120°+インサート 10°内旋
・適用荷重 500, 1000 N
LS-DYNAによる強度解析
ポスト表面の圧力分布を有限要素解析と力学試験で比較を行い、表面圧の最大値は実測値と有限要素解析の値においてほぼ一致したことを確認し、ミーゼス相当応力やせん断ひずみを求める解析を実施されました。
過伸展(屈曲-10°)によるポスト前方面のミーゼス相当応力分布と最大値
500 N負荷においては降伏応力の30 MPaを下回り、500 Nの力(日常的な動作)では破損が起きる可能性は低いと考えられる。1000 N負荷では全機種で降伏応力を超えるミーゼス相当応力が生じ、形状にかかわらずポスト前方面に1000 Nの力(ジョギング等のスポーツ)が発生することは危険と推測される。
深屈曲(屈曲120°)+内旋10°によるポスト後方面のミーゼス相当応力分布と最大値
屈曲120°に内旋が加わるとミーゼス相当応力が上昇。特に製品AとCはポストがフラット形状なためインサートの内旋によりポストの端部に応力が集中した。1000 N負荷で製品Aは30 MPaを超えた。小型フラット形状のポストは、後方面においても塑性変形を起こし破損するリスクが考えられる。
最大せん断ひずみ
製品Bは、ポストがカーブ形状なため接触面積の低下がわずかで内旋が加わってもミーゼス相当応力の上昇が小さかった。製品BとCは、屈曲120°+内旋10°でも30 MPa以下でポスト後方面において破損の可能性は低いと推測される。
解析結果
以上の結果から、1000 Nの力がポスト前方面に加わると、塑性変形を起こし、破損が起きると考えられ、またポストの後方面はカーブ形状であることが望ましいとわかりました。
人工膝関節のポストにおいて、ミーゼス相当応力が超高分子量ポリエチレンの降伏応力を下回っていること、またはせん断ひずみが0.1を超えないことがポストの強度設計の基準となると考えられる結果を得られました。
活用事例一覧
- 工業分野
-
- オープンソースライブラリで画像分析 - 多孔質体画像分析ライブラリPoreSpyとSimpleware Softwareの連携事例
- 金属積層造形部品の微細構造の特徴を捉える
- 現物のボイド(空隙)を考慮した繊維複合材の破断解析
- 3Dプリンティング技術により積層造形されたアルミ合金ラティス構造の品質保証の考察
- 非経口バイアル瓶の完全性を目的としたX線CTによるストッパーの封止工程の可視化
- Simpleware Softwareによる天然植物繊維の形態観察 - 繊維モデル
- Agナノ粒子焼結体の低温クリープ挙動
- Simpleware SoftwareとJMAGの連携による磁界解析 - トロイダルコイル
- 医工連携
-
- マイクロCTによる3D積層造形品の幾何的精度の考察
- 血管内デバイス開発におけるSimpleware Softwareの活用
- 不完全に並置された冠動脈ステントにおける血栓形成の医療画像分析
- Simpleware SoftwareとLS-DYNAの連携による生体解析 - 胸腰椎
- Simpleware SoftwareとLS-DYNAの連携による強度解析 - 腕神経叢モデル
- Simpleware SoftwareとLS-DYNAの連携による強度解析 - 人工膝関節モデル
- Simpleware SoftwareとCAEの連携による応力解析 - 大腿骨モデル
- Simpleware SoftwareとLS-DYNAの連携による強度解析 - 人体鎖骨モデル
- ※株式会社JSOLはSimpleware Softwareの正規代理店です。
- ※Simpleware Software の開発元は、Synopsys, Inc.(米国)です。
- ※記載されている製品およびサービスの名称は、それぞれの所有者の商標または登録商標です。