[活用事例]不完全に並置された冠動脈ステントにおける血栓形成の医療画像分析
- 分野
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- 医工連携
- 構成
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- Simpleware Base
- 解析ソフト
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- MATLAB

冠動脈ステント内に形成される血栓をSimplewareを用いて分析
ステント血栓症は、冠動脈ステントやインターベンション治療(ステントなどを用いた経皮的血管治療)の主要な合併症です。予期せぬことで、死に至ることもありますが、その発生率は低く、臨床調査だけでは機械学的な検査が困難です。このように、機器の技術進歩が進む中、実験モデルは装置の安全性や有効性への知見を深めるためにも不可欠なものとなっています。モデルの域を超え、我々には、画像処理技術を活用した新たな分析方法が必要です。冠動脈ステント性能の既定流動ループモデルにおいて、幾何学的なステントの特徴とその血栓形成との関係による局所的流量の影響を調査するため、デジタル信号処理が用いられました。
- データのご提供
- Edelman Lab (Harvard-MIT Biomedical Engineering Center)
https://edelmanlab.mit.edu/
プロジェクトマネージャー Jonathan Brown様
「ScanIPはサンプル結果を視覚化するだけでなく、他の方法では調査できなかった定量的なデータを抽出できるツールであったため、非常に役立ちました。」
実験データの収集
人間の冠状動脈と同じ血流状態のシミュレーションを行うため、体内と同様の環境を人工的に作り行う試験であるインビトロな流動ループ装置が使用されました。ステントは拡張状態の範囲下で、流動ループ内に配置されました。流動ループの実行が完了後、サンプルがマイクロCTスキャンされScanIPで処理を行うためDICOMファイルを出力しています。
Simplewareソフトウェアでの画像処理
マイクロCTデータがScanIPにインポートされた後、血栓形成と流体容量からステント支柱をセグメンテーションするために、実験テストから事前に計算されたしきい値レベルが使われました。さらに、3D可視化ワークフローの一部として、連続する構造を作成するためにスムージングフィルタが使用されました。カスタムMATLABプログラムは、支柱の位置を抽出し、マスクのピクセル値から各画像スライスにおける壁面距離を計算するのに活用されました。
結果と今後の活動
結果は、ステントの幾何学的特色が、凝固パターンの中で、特に1.606mmの幾何学的距離に相当する、0.6225Hzの周波数で重要な役割を果たしていることを示唆しています。幾何学的な特性と血栓分布の間の振幅二乗コヒーレンスがすべてのサンプルにおいて0.4より大きくなりました。
血管壁への不十分な圧着(実在の不均質モデルでの0.27mmから0.64mmに及ぶ最大の圧着不良)を伴うステント内において、血栓は支柱に直接隣接しているのではなく、ステント支柱間に存在することが分かりました。
この初期研究は、卓上実験と進んだ画像解析の使用が血栓形成の量についてだけでなく、血栓の空間的位置について、より深い洞察を得るためにどう活用できるかを示しています。この方法により、ステント設計と血栓形成の配置の相互作用についてより詳細な調査が可能です。
- 参考文献:
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- Brown, J, O’Brien, C.C., Lopes, A.C., Kolandaivelu, K., Edelman, E.R., 2018. Quantification of thrombus formation in malapposed coronary stents deployed in vitro through imaging analysis, Journal of Biomechanics, 71, 296-301.
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