[活用事例]金属積層造形部品の微細構造の特徴を捉える
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Simplewareソフトウェアによる金属結晶構造のモデリングによりシミュレーションの精度が向上
Simpleware ソフトウェアを使用して、分析対象の微細構造の高品質メッシュを生成した事例です。
粒子内の応力/ひずみを正確に予測するには、高品質なメッシュを通じて微細構造内の粒子の特徴を捉えることが最も重要です。Simpleware ソフトウェアは、ソフトウェアのマルチラベルマスク機能により、簡単に粒子形状を有限要素互換メッシュに変換できます。それにより、他のメッシュ作成プログラムでは生成が難しい異なるサイズ/形状の粒子も、可能な限り最小限の要素数を維持しながらメッシュ化できます。
導入
金属粉末ベースの積層造形 (PAM) プロセスでは、通常、異なる粒径とアスペクト比の微細構造が生成され、材料の機械的特性に影響を与えます。この研究では、Simpleware ソフトウェアを使用したワークフローで、微細構造内の局所的な粒状の応力場をより適切に表現できるようになりました。この研究は、粒子サイズとアスペクト比の影響を考慮して作成する合成微細構造生成方法を利用して作られた結晶塑性有限要素モデルを使用して行われました。
ボクセルメッシュモデルを使用してサンプル RVEを離散化する場合、階段状の表面によって粒界を捕捉するには分析が不十分です。Simpleware ソフトウェアを使用して、滑らかで穴あきの無いマルチドメイン体積有限要素 (FE) メッシュを生成することでこの問題に取り組み、粒界を正確に捕捉しました。
Simplewareによるメッシング(左)と間隙のあるボクセルメッシュ(右)の粒形状の境界面の比較
Simplewareソフトウェアで生成したメッシュを、シミュレーション時間と予測された RVE 機械的特性を使用して有効性を判断しながら、ボクセルメッシュを使用した以前の結果と比較しました。
これにより、Simplewareソフトウェアで作成したメッシュでは粒界付近での局所的な応力の発生をより適切に捕捉できるようになりました。また、材料内の欠陥やボイド形成予測に役立ち、PAM を使用して製造された複雑な部品の性能をより深く理解するための将来の洞察が得られました。
FEメッシュの生成
マトリックス データは、処理のためにSimpleware ScanIPへインポートされる前、粒子ラベルと等しいグレー スケール値を含むボクセル画像に変換されました。その後、Simplewareソフトウェアで各粒子をセグメンテーションし、サーフェイスおよびボリューム メッシュとして出力しています。ボクセルメッシュの問題の1つは、モデルの精度の低下を引き起こす「階段状の形状」が発生することです。この問題は、Simplewareソフトウェア のアンチエイリアスおよびスムージング ツールによって解決することが可能で、粒界に沿った滑らかな輪郭が保証されます。
さらに、Simplewareソフトウェアの FEモジュールで生成されたメッシュは、ボクセルメッシュと比較して、適切な解像度で小さな粒子のサイズをより適切にとらえることができました。メッシュに粗密をつけ形状表現性を高めるアルゴリズムを使用することで粒子の形状がより正確に表現されると同時に、モデル全体の要素数も削減できます。これにより、結果の品質に大きな影響を与えることなく、計算コストを削減する効果があります。
70万の自由度を持つ20万の10節点四面体要素を含むSimplewareソフトウェアメッシュ(左)と、81万の自由度を持つ 20節点ブリック要素(40x40x40グリッド)のボクセルメッシュ(右)
FE シミュレーションと結果
微細構造の情報を持つ構成モデルに基づいて、特定の境界条件と構成モデル定義をメッシュに追加しています。文献から得られた特性を使用して、RVE に一軸引張荷重を加えるシミュレーションをAbaqus/Standardで実行しました。構成モデルの特性は、粒子形状を表すさまざまな方程式を使用して定義され、周期的な境界条件が RVE のすべての外面に適用されました。
ボクセルメッシュを使用して単一結晶粒の RVE で新しいワークフローのテストが行われました。同じ材料特性、結晶粒方位、荷重と境界条件、および寸法が使用されました。その結果、荷重方向における均一な垂直応力-ひずみ挙動は同一の結果をもたらすことを示しました。次に、多結晶材料の RVE を使用して、Simplewareソフトウェアで生成したテトラメッシュの精度がテストされました。
六面体および四面体 FE メッシュを使用した微細構造 RVE の均質化された応力-ひずみ挙動:
四面体メッシュは六面体メッシュよりも小さな粒子を捉えることができます。
シミュレーションでは、2つもモデルの応力集中に関して結果に違いが示されました。要素サイズが均一な六面体メッシュは計算コストが削減される半面、小さな領域の形状を再現できないため、体積、サイズ、形状などの粒子特性の誤った表現につながります。さらに、このメッシュは人為的な応力上昇をもたらします。対照的に、四面体メッシュはジオメトリの鋭いコーナーを捕捉できるため、粒子内で最も高い応力を示します。
RVE微細構造内の2つの粒子のミーゼス応力コンター:
Simplewareソフトウェアの四面体メッシュ(左)は、ボクセルメッシュ(右)と比べてより正確に粒界を捉えています。
結論
このプロジェクトでSimplewareソフトウェアを使用してPAMのより正確なRVEメッシュを作成した結果、以前のボクセルメッシュモデルと比較して、結晶粒内の局所応力場の理解が深まりました。均質化挙動については一致していますが、Simplewareソフトウェアで生成したテトラメッシュでは局所応力の発生に大きな違いがみられ、これは、よく精緻化されたテトラメッシュを使用することで、より正確に確認できます。今後の取り組みは、結晶粒配向の割り当ての違いに関する分析の改善や、形状効果を検証するためのAM微小構造のテスト、アスペクト比、粒界効果、荷重方向、および質点の実装を検討しています。
さらに詳しく
Robert Saunders のプレゼンテーション「Mechanical Property Predictions of Additive Manufacturing Microstructures via Surrogate Modeling」(2020年10月7日収録)をご覧ください。
- Thanks to:
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Robert Saunders and the Naval Research Laboratory for permission to publish this case study under the following:
DISTRIBUTION A: Approved for Public Release, Distribution is Unlimited
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Robert Saunders and the Naval Research Laboratory for permission to publish this case study under the following:
- 参考文献:
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- R. Saunders et al., Influence of Grain Size and Shape on Mechanical Properties of Metal AM Materials. Proceedings of the 29th Annual International Solid Freeform Fabrication Symposium - An Additive Manufacturing Conference (2018, Austin, T
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