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2011.11.01

ドイツLS-DYNAフォーラム参加レポート

カテゴリー
: セミナー・イベント
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LS-DYNA

10月12、13日の2日間にわたり、独国シュツットガルトにおいて、DYNAmore社主催による、10回目のドイツLS-DYNAフォーラムが開催されました。1日目はディベロッパーズフォーラムと称して、DYNAmore社及びLSTC社の開発者からの情報提供がメインのフォーラムが開催されました。2日目は基調講演・一般講演を含むユーザーからの技術発表がメインのフォーラムとなりました。

ディベロッパーズフォーラム(10月12日)

シュツットガルトの中心駅近くにある、Maritim Hotel Stuttgartにて開催され、LS-DYNAやLS-OPTの機能に関する開発の経緯や、新機能の紹介が行われました。参加者は300名程度であり、LS-DYNAの新機能への関心の高さが伺えました。

各講演について簡単にご紹介いたします。

T. Borrvall (DYNAmore Nordic AB),
Selective Mass Scaling (SMS) in LS-DYNA to Reduce Non-Physical Inertia Effects
SMS(Selective Mass Scaling)の理論の説明とその適用範囲、今後の開発計画が発表されました。SMSは、剛体挙動の運動エネルギーを極力増加させないようにマススケーリングすることで、計算精度の低下を抑えつつ高速に計算ができる機能です。
T. Erhart (DYNAmore GmbH),
Review of Solid Element Formulations in LS-DYNA: Properties, Limits, Advantages, Disadvantages
ソリッド要素の種類(要素タイプ)ごとにその特徴と適用範囲が説明されました。精度は高くないが高速な要素・精度は高いが計算コストがかかる要素など、LS-DYNAには様々種類のソリッド要素が準備されています。それぞれの特徴を理解した上で、適切な要素タイプを選択する必要があります。
S. Hartmann (DYNAmore GmbH),
Introduction to Isogeometric Elements in LS-DYNA
LS-DYNAに実装されたアイソジオメトリック要素について発表されました。アイソジオメトリック要素は、CAD形状からLS-DYNAがメッシュを自動で生成する機能です。まだまだ開発途上にはありますが、FEメッシュをソルバ内部で生成できる機能であり、将来的に有望な機能です。
A. Haufe (DYNAmore GmbH),
GISSMO - Material Modeling with Enhanced Failure Criteria
新しいダメージモデルGISSMOについて発表されました。GISSMOモデルは、主に金属材料に対してダメージの蓄積を考慮したダメージモデルです。発表では、自動車のBピラーを例として、塑性加工解析にGISSMOを適用しダメージの蓄積を計算し、外部プログラムを使用して衝突解析モデルへマッピングを行った事例が紹介されました。これにより、材料の破断を精度良くモデル化できたということです。
K. Witowski (DYNAmore GmbH),
New Developments on Identification of Material and System Parameter with LS-OPT
LS-OPTの新しいオプションについて発表されました。破断を含む材料特性のパラメータフィッティングを行う場合、縦軸のみでなく、横軸の値も含めたフィッティングが必要になります。本機能は"CurveMapSegment"という名前でLS-OPTに組み込まれています。上記のGISSMOモデルのパラメータフィッティングもLS-OPTの新機能により実施されました。
J. Wang (LSTC),
Hybrid Version of LS-DYNA to Combine SMP and MPP Parallelization Technologies
HYBRID LS-DYNA/MPPについての発表。LS-DYNAは高度な並列化技術により、大規模なモデルをリーズナブルな計算時間でシミュレートすることができつつあります。現在主流となっているMPPは、領域を分割することで計算時間を短縮しますが、コア数の更なる増加に伴い、計算の大部分を通信に費やされるようになると、MPPのみでの更なる計算時間の短縮が見込めなくなります。一方でSMPは、メモリを共有する並列化手法ですが、コア数の増加に伴い、スケーラビリティ向上が見込めなくなります。両者を組み合わせることで、コア数の増加に伴う更なる高速化が可能となります。

LS-DYNA Forum

2日目は、シュツットガルトから電車で40分ほどの郊外にあるFILharmonie Filderstadt bei Stuttgartに会場を変えて、実施されました。共通セッションに始まり、午後は自動車安全と、メタルフォーミングの二つのセッションが行われました。講演の大部分はドイツ語で行われ、配布資料もドイツ語のものが多く、全てを理解することはできませんでしたが、印象に残った講演と概要をご紹介します。

会場の様子
会場の様子

共通セッション

J. Hallquist (LSTC),
Recent Developments in LS-DYNA - I, II
LS-DYNAの最新機能の紹介と、開発状況の説明がありました。Ver980の新機能として、電磁場と熱・構造とのカップリング機能、流体と熱・構造とのカップリング機能、周波数応答解析、音響解析、DEM(粒子法の一種:粉体や粉塵など)などが紹介されました。また、LS-DYNAにて実行可能なダミーモデル・バリアモデルの開発にも注力をしています。
M. Feucht (Daimler AG),
Critical Issues for a Robust Component Design in Passive Safety
1日目に紹介のあった、ダメージモデルGISSMOの具体的な適用事例の紹介がありました。破断パラメータの同定から、プレス解析と衝突解析の連携を行っています。その後、GISSMOモデルを使いながらロバスト設計を行った事例が紹介されました。
K. Gruber (AUDI AG),
CAE Process and Data Management ? DYNAmore Software Development at AUDI
AUDIとDYNAmore社が共同して、プロセス・データマネジメントシステムの開発を行った事例の説明がありました。本システムにより、効率的に解析モデルの作成とデータマネジメントが可能になったとのことです。
T. Komamura (Toyota Motor Corporation),
Development of Detailed AM50%ile Hybrid III Dummy FE Model
Hybrid-III 50%ダミーモデルの開発事例が紹介されました。実ダミーをCTスキャンにかけ、リバースエンジニアリングにより形状を取得しています。CAEと単品試験とのコリレーションから始まり、コンポーネント単位での精度検証を経て、ダミーモデル全体の精度向上を行いました。

自動車安全セッション

T. Hensel (BASF SE),
Optimization of Plastic Parts for Crash: Current State and Outlook
BASFが開発した異方性弾塑性樹脂モデルを用いた解析事例が発表されました。 繊維強化樹脂が増えたことで、異方性特性を考慮する必要が出てきており、特に歩行者下肢衝突ではロワバンパーサポートの剛性が結果に大きく寄与しており、異方性の考慮により精度が向上しました。
A. Heym (Takata-Petri AG),
OoP - Possibilities and Limitations of Numerical Simulation
アウトオブポジションにおけるエアバッグ展開解析事例が発表されました。 インフレータ特性の合わせこみや、エアバッグリッドの破断まで含めて、ダミーの乗員障害値を試験と比較している事例でした。

メタルフォーミングセッション

P. Feuser (Daimler AG),
Thermal Design of Forming Tools for Partial Press Hardening to Achieve Optimal Component Properties
温度の効果を考慮した、Bピラーの成形解析事例が発表されました。 サーモグラフを用いて試験時の温度を測定し、CAEの結果を比較し、良く合っていることを確認しました。

まとめ

米国と欧州と隔年で実施されているLS-DYNA国際ユーザー会議と異なり、本フォーラムはドイツ国内向けの会議となっており、説明も資料もドイツ語の講演が少なからずありました。日本からの参加者もまだまだ少ない状況です。

ドイツは多くの自動車メーカーがひしめいていることもあり、自動車に関する講演が中心のフォーラムとなりました。参加者の多くも、ドイツの自動車メーカー及びサプライヤであり、関心の高さが伺えます。

基本的にドイツ語での講演であり、日本から参加するのはややハードルが高いですが、自動車に関する最先端の講演は十分に価値あるものだと感じました。

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