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2011.11.01
10月10,11,12日ドイツ ミュンヘンにてDIGIMAT Users' Meeting 2011が開催されました。通算4回目を迎える今回のUsers' Meetingでは世界各国より125名を越える参加者があり、非常に盛況なうちに終了いたしました。(技術営業部 一ノ瀬規世)
会議概要
Users' Meeting は3日間開催され、1,2日目は講演、3日目は材料設計者向けと構造解析技術者向けのトレーニングが実施されました。講演はシングルセッションで行われ、開発元より4、ユーザより18、スポンサーより9と全部で30講演行われました。次の円グラフにはユーザ講演を適用分野別に分類したものです。過去3回のUsers' Meetingと比べると、構造解析の適用事例が多くなってきており、Digimatの構造解析への適用が一般的になってきた事が感じられます。また、分子レベルのシミュレーションやミクロ構造解析への適用も増えてきており、ミクロ領域でのシミュレーションとの連携などのニーズが高まっていることが分かります。
ユーザ講演の適用分野別の発表数
講演の様子
講演内容概要
開発元講演
12月にリリース予定のDigimat4.2.1の新機能の紹介とデモ、現在、R&Dとして実施されている最新の適用トピックス、Digimatの技術責任者でもあるUniversite catholique de LouvainのI. Doghri教授によるDigimatに関係する最新の研究成果が紹介されました。Digimat4.2.1の新機能としては、次のようなものが挙げられます。
- 繊維強化樹脂の疲労寿命予測(SN曲線の算出)(Digimat-MF)
- FPGF破断モデルの改良(Digimat-MF, Digimat-CAE)
- Hyblid法による計算時間の高速化(Digimat-CAE)
- LS-DYNA/Implicit, Marcへの対応(Digimat-CAE)
ユーザ講演
ユーザ講演としては、構造解析への適用事例、ミクロ構造解析に興味深いものが多く、印象に残った講演イトルと概要を以下に挙げます。また、JSOLからは2件の発表を行っており、営業部 小沢課長よりJ-OCTA, LS-DYNA, Digimatを用いた分子レベルシミュレーションとの連携事例、一ノ瀬よりDigimatとLS-DYNA/Implicitとの連携事例の紹介を行いました。
- Ludovic Chauvet (TRELLEBORG AUTOMOTIVE),
"FIAPLAST: An Engine Mount with PA6.6 50%GF Structure" -
- エンジンマウントのケーシング解析への適用事例。
- 軽量化のためにアルミからPA66GF50に変更を検討。
- Digimat to Abaqusにより、静解析、疲労解析で実機とよい整合を得た。
- 本解析により樹脂エンジンマウントケースが可能となり、15%のコスト削減を実現。
- Karsten Heinzle (JULIUS BLUM GmbH),
"Nonlinear Analysis and Failure Modeling of Short Fiber Reinforced Plastic Parts" -
- 家具やシステムキッチンに使われている樹脂製ヒンジへの適用事例
- Digimat開発元との共同プロジェクトの成果発表。
- 樹脂製歯車のまげ、せん断モードでの破壊解析を実施。
- Digimatの破断判定式(FPGF)を改良し、より現実的な破壊を表現できるようになった。
- Jan-Patrick Jurgens (BREMEN UNIVERSITY),
"Numerical investigation of residual stresses resulting from the curing process of composites" -
- CFRPの成形中のボイド生成と破壊をミクロ構造解析で検討。
- マトリックスの架橋時の収縮による残留応力を評価。
- ミクロ構造解析の各破断モードが次のような要因に支配されていることが分かった。
トランスバースクラック:全体境界条件、ファイバー・マトリックス界面、最少繊維間距離
相関剥離:各相の境界条件
- Dr Peter Foss (General Motors R&D),
"Application of DIGIMAT micromechanica modeling to polymer composites: calibration of thermo-elasticplastic material models" -
- Digimat-MFによる温度依存特性の予測精度を実験と比較して検討。
- Digimat-MXのリバースエンジニアリング機能により弾塑性特性を同定。
- 温度上昇にしたがって、一部ひずみが小さくなる現象が見られた。
- 上記の現象はソフトのバグではなく、RVEモデルでも同様の結果が得られており、実現象でも起こる可能性ある。
- Dr Lucien Douven (DSM Engineering Plastics),
"Effect of mesh density and accuracy of orientation mapping on mechanical behavior" -
- 樹脂流動解析で得られた繊維配向のマッピングの構造解析結果への影響を検討。
- 一軸引張では板厚方向のメッシュの細かさはあまり影響せず、2層以上で十分な精度が得られた。
- 曲げの場合では板厚方向に精度を得るために4層程度確保する必要があった。
- Dr Umesh Gandhi (Toyota Technical Center),
"Investigation of fiber orientation in fiber reinforced polymers" -
- 軽量化のための長繊維強化樹脂の繊維配向の評価方法の検討。
- CTデータと繊維断面の楕円形状を用いた配向予測との2つの結果を比較し、測定手法の精度を検討。
- 短繊維の場合では、どちらの測定方法でも問題なく測定ができている。
- 湾曲している繊維配向の計測手法の確立が課題。
講演者
JSOLからの講演
営業部 小沢課長(左)、 技術営業部 一ノ瀬(右)
Digimat-CAE/LS-DYNA implicitによる繊維強化樹脂の周波数応答解析
(Ref. N.Ichinose, "Expanding application and possibility by Digimat-CAE/LS-DYNA implicit")
相分離構造を考慮したCNT強化樹脂の非線形特性解析
(Ref. T.Ozawa, "Molecular simulation approach for predicting the parameters of DIGIMAT")
懇親会の様子
1日目の終了後にミュンヘンのBMW Weltに於きまして懇親会が行われました。展示されている自動車などを見学後、パーティースペースでの立食によるディスカッションの場と非常に美味なディナーが準備されていました。
R&Dチームリーダー Laurent ADAM博士(写真右)
懇親会でのJSOLメンバーと参加者
懇親会参加者の様子
懇親会参加者の集合写真
全体を通して
ヨーロッパ・北米だけでなくアジア地区からも多くの参加者あり、Digimatというソフトウェアのニーズの高まりを感じることができました。開発元からの新機能紹介やR&D活動の報告に関しましては、革新的な機能開発のために注力している様子がよくわかり、ソフトウェアの将来を期待させるようなUsers' Meetingでした。また、講演会場や昼食時、懇親会などの場におきましても非常に活発なディスカッションが行われており、参加者の方々もより良い製品づくりのために多くの情報を入手しようとされている様子が印象的でした。