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2012.06.01

第12回 LS-DYNA国際会議リポート

カテゴリー
: セミナー・イベント
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LS-DYNA

6月4、5日の2日間、デトロイトのHyatt Regency Dearborn(図1)にて第12回LS-DYNA国際会議が開催されました。参加者数は約600名を超え、基調講演を含め114件の発表が行われました。7月18、19日に開催するJSOL主催のユーザー会議に先立ち、LS-DYNAの最新の開発状況や技術発表で注目された点を中心に、会議の様子を報告します。

図1. 会場概観

図1. 会場概観

図2. 会議の様子

図2. 会議の様子

国際会議の構成

各セッションの分類と発表件数について、前回と今回を比較してみました(図3)。その結果、変化が見られた点について下記に挙げました。

  • 連続体モデリングのセッションの新設
  • 電磁解析のセッションの新設
  • 流体機能の発表の増加
  • 自動車関係の発表の各セッションへの分散

着目すべき傾向の1つとしては、流体、電磁解析といった、LS-DYNA980として開発を続けている機能・事例が増えたことによるセッションの拡大がうかがえます。また、もう1つの傾向としては、自動車に関するシミュレーションの進化がうかがえます。一見すると自動車に関する件数が少なくなったように見えますが、これには次の2つの理由が考えられそうです。1つ目は、自動車関連の材料の高度化、多様化に伴い、新たな解析技術の提案などが、連続体モデリングのセッションに配置されたこと、2つ目は、解析プロセス自動化やデータマネジメント方法の提案が増え、各セッションに配置されたことが挙げられます。

今回(2012)の構成

前回(2010)の構成 図3. 今回(2012)の構成(上)と前回(2010)の構成(下)

基調講演

Dr. Thomas J.R. Hughes (The University of Texas at Austin)
"Isogeometric Analysis: Introduction and Recent Developments"
Isogeometric要素は、NURBS曲線を基底関数とした有限要素であり、CADの面形状がそのままメッシュとなったようなイメージです。開発者であるThomas J.R. Huges教授によりIsogeometric要素が前回に引き続き紹介されました。
Dr. David Benson (University of California)
"Recent Development in Isogeometric Structural Analysis"
こちらも前回に引き続き、Isogeometric要素の紹介です。いくつかの新たな結果が付け加えられています。LS-DYNA971のR6.0.0から更に多くの機能が使用できることを受け、LSTCからユーザーに再度発信したいという意向を感じました。
Mr. Doug Beary (GOMPUTE, Inc. and Gridcore AB)
"High Performance Computing On Demand and Remote Visualization"
世界中どこの拠点からでもHPC(High Performance Computing/Computer)を共有・利用できる環境を目指すGOMPUTE社のサービスについて紹介がありました。
Mr. Kenji Takada (Honda R&D Co., Ltd)
"Fracture Prediction of High Strength Steels with Ductile Fracture Criterion and Strain Dependent Model of Anisotropy"
従来のLS-DYNA機能では予測が難しかった超ハイテン材の破壊について、破壊予測精度が向上した結果が報告されました。Digital Image Correlationを用いてLankford値のひずみ依存性を算出し、Hill異方性降伏条件に組込んだユーザー材料(JSOLと共同で開発)を用いています。
Mr. John Combest (GHBMC Steering Committee Nissan)
"Completion of Phase T Development of the Global Human Body Finite Element Model"
新型ダミープロジェクト"GHBMC"の有限要素モデルの紹介が報告されました。
Mr. Paul A. Du Bois (Consulting Engineer)
"Development of Failure Models in LS-DYNA for Materials in Aeronautical Structures"
MAT224(*MAT_TABULATED_JOHNSON_COOK)の破断モデルについての紹介がありました。
Mr. Roger Grimes (LSTC)
"An Overview of LS-DYNA Implicit, Illustrated by Example Problems"
LS−DYNA陰解法について、数々の解析実例がアニメーションとともにユーザーに紹介されました。車両モデルの自重解析やSSR、ゴムのEFGによる解析、固有値解析、*CONTROL_IMPLICIT_FORMINGを用いたルーフクラッシュ解析などが紹介されました。
Dr. John O. Hallquist (LSTC)
"LSTC's Suite of Software: Recent Developments and Roadmap"
今回紹介された内容について、簡単に概要をまとめました。
プロダクト紹介
LS-PREPOST、LS-OPT、LS-TaSC(図4)、ダミー・バリアモデル、USAコードが紹介されました。トポロジー最適化ソフトであるLS-TaSCについては、セッション別の発表では次期バージョン3.0に関する開発計画の紹介が別途なされています。ソリッド表面を対象とした形状最適化や、LS-Prepostとの更なる連携を予定しています。
戦略
LSTCの変わらぬ戦略として「ワンコード戦略」がありますが、これに加え、あらゆる物理現象をどのようにシミュレーションするのが良いのか、多面的な観点からLSTCの考え方について述べられました。
開発項目
LS-PREPOST
LSTCが力を入れている部分の一つで、最もスライドを割いて発表がなされた部分となりました。注目は、次期バージョン(4.0)に採用された新しいグラフィックレンダリング機能による描画の高速化が挙げられます。その他、マルチフィジックスのキーワード対応や結果表示機能、メタルフォーミング用GUI、エアバッグ折りたたみ機能、ユーザー定義のスクリプトによるマクロ処理などについての紹介がありました。
LSTCダミーモデル
現在開発中のダミーモデルについては、開発の経過状況が報告されました。今後開発予定のものとして、歩行者頭部、EuroSID2/EuroSID2reのFASTバージョン、Qシリーズ子供ダミー、FLEX PLI、WorldSID 5パーセンタイル女性ダミーが挙げられました。
非圧縮性CFDソルバー
先に述べたマルチフィジックスに関連して、構造解析との連成、熱との連成が紹介されました。応用例として、水面への構造物落下、スロッシング、人工弁(図5)、ヒートパイプ中の熱流体解析のシミュレーションが挙げられました。また、自動ボリュームメッシャーについて、各種機能の紹介がありました。
電磁場(EM)解析ソルバー
こちらもマルチフィジックスに関連して、構造解析との連成、熱との連成が紹介されました。応用例として、電磁成形解析が数例に加え、鋼板の誘導加熱やレールガン(図6)の事例紹介が行われました。
ALE、DES、SPH、Particle関連技術
各機能の最新開発状況として、ALEについては動的なアダプティブリメッシュ(通常のシェル・ソリッド要素も対応、図7)と熱連成の事例紹介、DESについては結合モデルによる破壊、亀裂進展シミュレーションの事例紹介、SPHについては熱連成によるFSWの事例紹介やSPH同士のカップリング、Particleに関してはDESとのカップリング予定について紹介されました。

図4. LS−TaSCによるトポロジ最適化 図4. LS−TaSCによるトポロジ最適化

図5. 人工弁のシミュレーション

図6. レールガンのシミュレーション

図7. 動的アダプティブALE

テーマ別セッションについて

連続体モデリングのセッションにおいて、JSOLより2件の技術発表を行いました。

Shinya Hayashi
"Predictive of Failure Behaviors in Polymers Under Multiaxial Stress State"(図8)
延性破壊する樹脂材料のパンクチャーテスト(ISO6603-2)では、摩擦が大きくなると最大荷重が増加して破壊モードにも変化が生じることが知られています。MAT_SAMP-1の2軸引張特性とダメージ機能、MAT_ADD_EROSIONのひずみ速度と応力3軸度に依存した破断塑性ひずみ特性により、荷重-ストローク履歴や破壊時のストロークだけでなく、破断モードについても高精度に再現することができました。
Toshiro Amaishi, Ninshu Ma, Yasuyoshi Umezu
"Recent Reserch and Developments of LS-DYNA's User Subroutine in JSTAMP/NV"(図9)
NUMISHEET2011のベンチマーク(十字形状カップの温間深絞り)を対象に、JSOLが開発したユーザー材料モデルを適用することにより、割れの予測精度が向上する結果が得られました。このユーザー材料モデルは、塑性異方性に温度依存性を持たせることができ、これによりJSTAMP/NVで更に高精度なシミュレーション結果を得ることができます。

図8. JSOL林発表

図8. JSOL林発表

図9. JSOL天石発表

図9. JSOL天石発表

展示スペースについて

今回の出展者数は30社近くに上り、前回より大幅に増加しました。JSOLからは主にJ-STAMP、J-WELD、THUMSの展示・紹介を実施しました(図10)。今回の国際会議の翌日にTHUMSのユーザー会議を控えていることもあり、特にTHUMSに関する質問が多かったように思います。

図10. JSOL展示ブース 図10. JSOL展示ブース

まとめ

今回の国際会議では、LS-DYNAの機能の拡大とともに、参加者および展示企業の増加傾向が見てとることができました。JSOLとしても、その進化に遅れをとることなく、更には機能拡大の一部をリードしていく覚悟が必要と感じました。ユーザーからのニーズが機能拡大のモチベーションに最も大きく影響します。7月の国内会議には是非お越しいただき、情報・意見の交換ができればと、部員一同お待ち申し上げております。

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