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2012.06.01
2012年6月6日、HYATT REGENCY DEARBORNにて弊社主催のTHUMS USA Users Meeting が開催されました。全体で52名の方がご参加され、5つの講演をいただきました。
The 2012 THUMS USA Users Meeting 開催概要
- 日時
- 2012年6月6日(水)
- 場所
- Hyatt Regency Dearborn(アメリカ、ミシガン州)
- 講演
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- Development of New Generation THUMS
Mr. Tsuyoshi Yasuki, Toyota Motor Corporation - Development of Active THUMS with multiple muscles in human whole body
Dr. Masami Iwamoto, Toyota Central R&D Labs., Inc. - THUMS positioning setup in LS-Prepost
Mr. Philip Ho, Livermore Software Technology Corporation - Toyota's Collaborative Safety Research Center
Mr. Chuck Gulash, Toyota Collaborative Safety Research Center - Injury Metric Development for the THUMS Model
Dr. Joel Stitzel, Wake Forest University
- Development of New Generation THUMS
- URL
- https://www.jsol-cae.com/en/event/usersevent/2012/thums/
講演について
最初にTHUMSの開発元、トヨタ自動車株式会社 安木剛様から「次世代THUMSの開発」と題して、次世代の人体FEモデルであるTHUMS Version 4の開発についてご紹介をいただきました。ダミー実験では予測困難な内臓傷害を再現するため、臓器ごとの形状や物性および臓器どうしの繋がり方まで詳細にモデル化し、高精度CTスキャン画像や最新の研究データを参照して、傷害の予測精度を従来モデルに比べて大幅に改善させたとのことです。完成したモデルを用いて文献などにある献体試験データと比較を行い、力学応答の妥当性が検証されました。また、車両前面衝突を模擬した計算を実施し、衝突現象終了まで安定的に数値計算の実行が可能なことが確認されました。高精度の人体モデルを安定的に計算できることは人体モデルにとって非常に重要なポイントであり、THUMSの普及につながるものだと思います。
次に株式会社豊田中央研究所 岩本正実様から「人体全身の多数の筋をもつアクティブTHUMSの開発」と題して、"アクティブTHUMS"の開発についてご紹介がありました。衝突前の人体の姿勢保持や身構え・回避動作において発生する筋作用が、衝突後の人体の挙動や傷害に影響を及ぼすことが報告されており、衝突前の筋作用の影響を調べるために、全身の筋をモデル化したアクティブTHUMSを開発した、というものです。発表の中ではアクティブTHUMSの概要と、それを用いた解析事例が紹介され、自発的に動作するTHUMSのアニメーションなども紹介されました。
昼食は丸テーブルで小グループとなっていただきました。ご参加された方が人体バイオメカニクスの専門家の方々ということもあって、専門分野のお話を中心に活発な会話が交わされておりました。
午後の講演は、最初にLivermore Software Technology Corporation(LSTC)のMr. Philip W. Ho様から、LS-PREPOSTを用いたTHUMSのポジショニング機能の紹介がありました。2つの手法があり、1つは関節に仮想的な回転中心を設定し、その中心の周りにTHUMSの各部をLS-DYNAを使用して回転させる、というものです。もう1つは操り人形のように体の各部にワイヤー(ビーム要素)を設定し、目的のポジションになるまで牽引する計算をLS-DYNAで行うというものです。まだ開発中とのことですが、ご参加された方からもいろいろなご質問があり、ポジショニング機能への期待の高さを感じました。
午後の講演の2つめは、Toyota Collaborative Safety Research Center(CSRC)のMr. Chuck Gulash様から、CSRCで実行されている様々なプロジェクトのご紹介がありました。CSRCのミッションは安全性に関する新しい技術を構築することで、北米を代表する大学や病院、研究所、政府機関と幅広く共同研究を行っています。現在は全産業分野を対象として、モデリングツールの開発、衝突回避技術、運転者の注意散漫対策など19ものプロジェクトが進んでいるとのことでした。
最後の講演はWake Forest大学のDr. Joel Stitzel様から「Injury Metric Development for the THUMS Model」と題して、THUMSと通常のダミー(ATD)の障害値の比較についてご紹介がありました。この比較によってこれまで実施されてきたATDの障害値予測とTHUMSによる人体の障害予測が結び付けられ、衝突時の障害予測の精度向上につながる、というものです。適用事例として実際の交通事故の再現が最後に紹介され、THUMSによる障害の予測の有用性が確認されました。
ユーザー会終了後も参加された方々が小グループとなって活発な情報交換を続けられ、非常に有意義なユーザー会であったと思います。
The 2012 THUMS USA Users Meeting(弊社本部長 林のご挨拶風景)