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2008.05.01

実機に近づけるための工夫 スムーズコンタクト

カテゴリー
: 構造解析
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LS-DYNA

塑性加工問題のシミュレーションでは、通常金型は剛体要素でモデル化されます。金型と材料の間のコンタクト定義が適切であれば、多くの場合このようなモデル化で妥当な結果が得られます。しかし金型が部分的に非常に細密な形状を有している場合、あるいは設計検討の工数の制約から大規模なモデル化が困難である場合、平面の集合としての多面体である金型表面と材料の接触過程で問題が生じ、貫入や異常変形を誘引することがあります。これは、本来滑らかな曲面であるはずの金型表面が多面体近似されているため、材料のスムーズな流れが妨げられることがあるためです。このような場合、しばしばコンタクトのペナルティ剛性をわざと落として、多少の貫入を許しながら材料がスムーズに移動できるようにするなどの対策がとられます。

このようなモデル作成上の工夫に加え、コンタクトに起因する問題を回避するための代替方法として、金型表面を多面体ではなくスムーズな曲面で近似する「スムーズコンタクト」オプションが実装されています。この機能はFEMメッシュを滑らかにカーブフィッティングすることにより、実際の金型サーフェースに近いスムーズなマスター面を生成します。このオプションを起動するためにはLS-DYNAの*CONTACTキーワードにオプションとして「_SMOOTH」を追加することで設定できます。現在このオプションが使用できるコンタクトタイプは以下の10タイプです。

  • SURFACE_TO_SURFACE_SMOOTH
  • NODES_TO_SURFACE_SMOOTH
  • ONE_WAY_SURFACE_TO_SURFACE_SMOOTH
  • FORMING_SURFACE_TO_SURFACE_SMOOTH
  • FORMING_NODES_TO_SURFACE_SMOOTH
  • FORMING_ONE_WAY_SURFACE_TO_SURFACE_SMOOTH
  • AUTOMATIC_SURFACE_TO_SURFACE_SMOOTH
  • AUTOMATIC_NODES_TO_SURFACE_SMOOTH
  • AUTOMATIC_ONE_WAY_SURFACE_TO_SURFACE_SMOOTH
  • AUTOMATIC_SINGLE_SURFACE_SMOOTH

スムーズコンタクトの機能

スムーズコンタクトは隣接要素との境界の連続性を考慮して1要素の表面を単純な直交多項式からなる曲面で近似します。曲面は必ず要素構成節点を通ります。図に示すように、接触判定にマスターセグメントの代わりに曲面を使います。これにより以下に示す効果が期待できます。

  • 接触面の法線方向の急激な変化を避けることができる
  • 実際の面により近い接触面を表現できる
  • 張った角によって発生するコンタクトノイズを低減できる
  • 粗いメッシュでもスムーズな解析が実行できる

適用例

実際にスムーズオプションの効果を見てみましょう。図は重力により剛体のダイに変形体のシートをかぶせるテスト問題です。シートは剛性を持たないヌルシェルを用いているため、ダイ表面になじみ、接触面がどのような形状になっているかを可視化することができます。スムーズオプションを使わない場合は、シートは多面体の剛体メッシュにそのまま張り付いていますが、スムーズオプションを使った場合は、曲面で補間されたに表面に張り付いているのがわかります。

次に、このスムーズオプションが実用的な問題でどのような効果があるかを検証します。単純なモデルですが、ハット形状のシートフォーミング解析でノイズがどれくらい軽減しているかを見てみましょう。このような塑性加工問題をLS-DYNAで計算する場合、一般陽解法を使って計算するのが普通ですが、そのとき、成形圧(接触力)の履歴には陽解法特有の振動がみられます。こうした振動の発生の原因のひとつはツール表面を材料が滑ることにより発生する接触力の変動です。 この数値ノイズが時として結果の評価を難しくすることもあるため、解析者はノイズを抑えるために、コンタクト定義にダンピングを定義するなどの対策をします。この例では単純にスムーズオプションを使わなかった場合と使った場合とで、接触力上のノイズレベルにどれくらいの差があるかを確認しました。スムーズオプションを使った解析では、ノイズのピークが使わなかった解析に比べてかなり抑えられていることがわかります。

このようにスムーズコンタクトは実際の金型サーフェースを表現し、安定した接触計算を行うのに有用であるといえます。

オプション

スムーズコンタクトにはフィーチャーラインを保存するオプションがあります。*CONTACT_..._のOptional Card CにFLANGLというオプションが追加されており、このオプションはゼロより大きな値を入力すると、ここで指定した角度以上の角度をもつセグメントエッジがフィーチャーラインとして認識され、スムージングの対象とされません。

まとめ

スムーズコンタクト機能の有効性について簡単なモデルで検証を行い、その効果を確認しました。スムーズコンタクトのメリットをまとめると以下のようになります。

  • 滑らかな曲面に近づけるために極端に細かいメッシュ分割を行う必要がない
  • メッシュ数が少なくなるためD3PLOT等のデータサイズが小さくなる
  • 接触にともなって発生する数値ノイズが低減される
  • メッシュ分割の細かさによる結果のばらつきが低減する
  • 計算コストは通常のコンタクトとそれほど変わらない

ただし注意点としては、補間された曲面はCADサーフェースと完全に同じではないということがあげられます。また現状では以下のようにSMP版、MPP版とで動作の違いがあります。

SMP
V.971現行リヴィジョンではFormingコンタクトにのみ適用可能
マスターセグメントは剛体のみ使用可能
MPP
上記すべてのコンタクトタイプでスムーズオプションが使用可能
マスターセグメントが変形体でも使用可能

このようなスムーズコンタクトの特徴を充分理解したうえで、解析精度の向上にお役立てください。

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