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2008.05.01
近年、スプリングバックの高精度なシミュレーションに向けて、材料モデルの開発をはじめ数多くの取り組みが行われています。また、シミュレーション結果を利用した金型見込みなどスプリングバック対策にも多くの取り組みが行われています。この両者は組み合わさることでより効果的な金型設計指針となります。
本紹介では、はじめに、Yoshida-Uemori モデルを用いたスプリングバックシミュレーションと実験結果の比較を行い、その妥当性を示します。次に、JSTAMP のスプリングバックの要因分析手法とスプリングバックを金型に見込む手法を紹介し、その有効性を示します。
スプリングバックのシミュレーション
解析対象は、図1 に示すUnderbody Cross Member で、ドロー成形、トリミング後のスプリングバックの多工程解析となる。
図1: 解析対象(Underbody Cross Member)
FEM 解析には、弊社がYoshida-Uemori モデルをサブルーチンとして組み込んだLS-DYNA を用いています。 材料は板厚1.62mm のDP600 を用います。機械的特性はTable1 に示します。Yoshida-Uemori モデルと除荷ヤング率の塑性ひずみ依存性に関するパラメータは文献から機械的特性をもとに近い値を適用しました。モデル化は1/2対称としました。
図2 にスプリングバック後の対称面での断面形状を示します。解析結果と実験結果を比較すると、縦壁部分の壁反り、スプリングバック量が解析により精度よく予測できていることが確認できます。
図2: Y=0 断面形状
スプリングバック対策
図3 に今回提案するスプリングバック対策の流れを示します。スプリングバックの要因分析結果に基づく成形条件の変更と、スプリングバックの金型への見込みで構成します。
図3: スプリングバック対策の流れ
スプリングバックの要因分析
スプリングバックは離型前の残留応力を初期応力とした弾性回復と考えられます。ここで、以下のようなその初期応力の分解を考えます。
σT は板面方向成分を板厚方向に平均した応力、σM は板面方向成分の偏差応力、σC は板厚方向成分です。 α 、 β 、 γ はそれぞれの応力成分のスケールファクターです。
σT はねじれ、σM は反りの主因と考えらます。スケールファクターを調整したσresearch を初期応力とした解析結果を整理することによりスプリングバックの要因分析が可能になります。
次に、本手法の適用例を示します。図4 の左はσM、右はσT に初期応力を限定した解析の変位ベクトル図です。
また、図5 にY= 0、Y= -370 断面の形状を示します。これらから、Y= 0 対称境界面付近での壁反りはσM、開きはσT が影響していることがわかります。一方、Y= -370 付近ではσT が主因のねじれにより開きが発生していることがわかります。
図4: 変位ベクトル図
図5: 断面形状(上:Y= 0、下:Y= -370)
金型への見込み
FEM を用いて金型メッシュを変形する手法を提案します。変形条件には式(1) を初期応力とする解析で得られる変位を用います。
例えば、 α 、 β 、 γ に.1 を与えればスプリングフォワード解析を用いた見込みになります。また、β に.1 を与え、他は0 とすることにより、ねじれ成分だけを見込むことも可能です。
図6 にスプリングフォワード解析を用いた場合の金型見込み量分布図を示します。直接変位条件を与えられないブランクホルダー部分が滑らかな形状を提示できていることがわかります。なお、成形ができない負角が発生しないように変形スケールは自動で調整します。
図6: 金型の見込み量分布図
次に、本手法の有効性を検討します。見込み前と後の金型を用いたスプリングバック後の形状をそれぞれ製品形状と比較しました。図7 にその形状誤差の面積率を示します。形状誤差1.0mm 以内の領域は見込み前は50% 程度しかなかったが見込み後の金型を利用することで90% 以上に改善されました。なお、 形状誤差評価の前には製品形状との距離が評価形状の全点で最短になるように最小二乗法を基本とした最適化処理により位置合わせを施しています。
図7: 形状誤差の面積率
最後に
Yoshida-Uemori モデルを用いたスプリングバックのシミュレーションは実験結果と良く一致することが確認できました。そして、JSTAMP のスプリングバックの要因分析手法と金型への見込み手法により効果的にスプリングバック対策が行えることがわかりました。本記事は、第58 回塑性加工連合講演会における講演内容に加筆・ 修正を加えたものです。