
CAE Technical Library 注目機能紹介 - CAE技術情報ライブラリ
2012.08.01
ランナーシステムの役目は、樹脂を射出ノズルからキャビティに送り込むという単純なことですが、ランナーは、実際には非常に重要な役割を果たしており、製品品質向上の為には、質の高いランナーデザインが重要なポイントになっています。従来のコールドランナーシステムには、材料の無駄、リグラインドの課題、成形サイクルの増加といった特有の課題があります。また、ウェルドラインや光沢の悪さなど製品の外観不良などの問題も発生します。ホットランナーはこれらの問題解決法として幅広く採用されおり、射出圧力/型締め力の軽減、キャビティ充填の簡素化、サイクル時間の短縮、製品品質の改善、そして、エネルギー/材料の節約という数多くのメリットが生まれます。製品の応用分野は、自動車用バンパー、ダッシュボード、そしてTV/LCDのカバーといった大型のプラスチック部品に加え、ボトルキャップ、食品用プラスチック容器などの日用プラスチック製品にも及んでいます。
ホットランナーシステムは、主にホットランナーゲート、ホットノズル、マニホールド、加熱コイルなどから構成されますが、それらの設計の良し悪しはホットランナーシステムのパフォーマンスに大きな影響を与えます。また、ホットランナーシステムのメカニズムは非常に複雑なため、技術的には温度の管理、フローの不均衡、材料の過剰加熱などの重要な課題が残されています。 そこで、量産に先立ち、ホットランナーの潜在的な問題を予測するためのシミュレーション技術の確立が求められています。
この課題解決のため、Moldex3Dが有する最新テクノロジー「アドバンスト ホットランナー(Advanced Hot Runner)(オプション)」をご紹介します。アドバンスト ホットランナー機能を活用することで、ホットランナー設計者はメルト温度、圧力低下、せん断発熱効果、そして金型ベースの温度などを解析、調査することが可能になります。 これらのシミュレーションの結果は、複雑なホットランナーシステムの理解やホットランナー設計に潜む課題の発見にも役立ちます。
図1は、アドバンストホットランナー解析の準備作業を示しています。ランナーノズルなどの各パーツを手軽に作成することができ、主なホットランナーコンポーネントは自動でインポート、属性設定、メッシュ生成されます。また、熱伝導率などの物性値も簡単な方法で定義できます。
図2は、ランナーおよび金型ベース温度の解析結果です。金型内部、ホットランナーシステム内部の温度分布などを可視化することが可能であり、金型設計にお役立て頂けます。
図1 アドバンストホットランナー解析の準備作業
図2金型ベース、ランナーの温度分布
解析事例
パターン1:コイルを緻密に巻いたケース
パターン2:細線コイルを間をあけて巻いたケース
パターン3: 太線コイルを間をあけて巻いたケース
上記3パターンは、次の3例で解析。
- 細線コイルを緻密に巻いたケース
- 細線コイルを間を空け巻いたケース
- 太線コイルを間を空け巻いたケース
※エレメント其々は、5wat/Cm2 で加熱
解析結果:それぞれのランナー内の樹脂温度を検証した結果
- 65.15〜288.35、ランナーの中と外側で温度差あり
- 65.13〜224.97、ランナーの中と外側で温度差あり
- 65.14〜224.97 、ランナーの中と外側で温度差なし
以上の結果から、この3例からは、パターン3が最高の効率であることが導かれた。