NSafe^®：手間をかけずに高精度な破断を検討

近年の衝突・衝撃解析では、全体的な変形状態だけではなく、局所的な変形や破断の定量的な評価が求められるようになってきています。これは、高精度の解析には、全体の挙動に少なからず影響する材料や溶接部の破断も正しく再現することが必要であるためです。しかしながら、破断まで考慮した衝突現象を解析すること容易ではありません。

破断を精度良く解くためには、数多くの実験を行い、その結果を物理モデルとしてソフトウェアに組み込む必要があります。そのため、破断解析業務の遂行にあたり、必要な実験の繰り返しによる破断情報の取得やソフトウェアのカスタマイズが必要になります。しかし、この作業は物理的な知識だけではなくプログラミングの知識も要とするため、実現にはかなりのコスト（時間・費用）が発生します。

この解析困難な破断現象を精度よく解析するため、JSOLは日本製鉄株式会社が開発した破断予測ソフトウェアNSafe^®-MAT/SPOTを衝撃・構造解析ソフトウェアLS-DYNAに組み込み製品化しています。本記事では、NSafe^®の特徴と適用事例について紹介します。

NSafe^®による破断解析の流れ

NSafe^®は、スポット破断を解析する「NSafe^®-SPOT」と、材料破断を計算する「NSafe^®-MAT」に大別できます。
これらの製品を実行して破断を解析するためには、破断計算に対応したモデル、特に材料情報が必要です。一般的に、破断を考慮する場合は、ユーザーが実験等から得られた情報をもとに自分で入力してモデルを対応させる必要があり、この作業が破断解析を行う上でのハードルのひとつとなっています。

そのため、NSafe^®では、新たなモデルを用意することなく既存のモデルを自動的に破断計算に対応させるための前処理ツールをご用意しています。前処理ツールには、スポット破断用のプリ処理ツールNSafe^®-SPOT Preと、材料破断用のプリ処理ツールNSafe^®-MAT Preがあります。また、破断判定は、LS-DYNAの計算中に破断プログラムをLS-DYNAのユーザーサブルーチンとして実行する逐次破断判定と、計算結果のポスト処理による破断計算（NSafe^®-MATのみ）を利用できます。

NSafe^®-SPOTは、鋼板のスポット溶接部破断を予測するプログラムです。スポット溶接継ぎ手試験から得られる実験破断荷重を、応力集中モデルを用いて一般化しており、材質、試験片形状、ナゲット径を統一的に整理して実装しています。また、軟鋼〜ハイテン材、超ハイテン材、ホット材など、自動車鋼板として使われる鋼材に幅広く対応していることも、NSafe^®-SPOTの特徴です。